もうひとつの必然 Vol2ー1


 凄いお話しを聴いちゃいました。

 寧ろ興味本位で聞いてしまったあたしこそ、申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。


 肋骨が二本も折れていて自分の治療を後回しにして誰かに付き添うなんて。

 そんな事を出来る人が居るなんて想像出来ないけど。

 璃央さんがそう云う人なのね。


 底知れぬ何かを秘めてる方なのかも知れない。

 丁寧な口調で話す璃央さん。

 軽口で遣り取りする璃央さん。

 紫音ちゃんや綾音ちゃんに憎まれ口を利く璃央さん。

 そして優し気な微笑みを湛える璃央さん。


 まだあたしには同じ人のように思えないのは、璃央さんを知らなさ過ぎるからなのだと思う。

 凄く複雑で、ある意味では何かを拗らせているのかな?

 漠然としてるけど璃央さんに興味が湧いて、もっと知りたいって感じるわ。


 あれ? なに? これ? なんなの?

 まさか……

 違うわよ。そうじゃ無い。まだ逢って数時間なのよ?

 言葉だってお仕事の話し以外そんなに交しても無いし。

 そうね。引っ張られたんだわ。

 いまのお話しに。

 あたしが信じられないような事を成した璃央さんのお話しに。


 そう。この感情は。そう云う事。

 尊敬します。

 人間として。


 もうカップ麺の件なんて些事ですよっ!

 でもお野菜はちゃんと摂って下さいね。

 最後だけちょっと現実逃避しちゃうのは女の特権よっ。

 って云ってみたいわぁ……



 ジジッ……ジジッ……

「嬉しいんだから涙は枯れないわよ」

「そうか。嬉しいのか。ありがとう」

「想いはずっと続いて行くの。だから」

「それなら哭き疲れて眠るまでだな」




「まぁ、弥生。なんだ。璃央がこの土地に来る事になった経緯はまだまだ沢山在るんだが、それは今晩にでも直接聞いてくれなぁ」


「はい。璃央さんはとても尊敬出来る方だと想います。びっくりしちゃってるのが大半ですけど、いまのお話しの経緯を璃央さんにお話しして是非聞いてみたいです」


「璃央君の闇もあれでなかなか深いから手強いわよぉ。ふふふ。それに彼もお義母さんと一緒で堅苦しいのは苦手だから、普通に話した方が良いかも? 似た者同士? 類は友を呼ぶ? あっ。同じ穴の狢! これよっ!」


「彩華や。あたしゃぁこれでもお前の親なんだがねぇ。あんまり貶めるもんじゃ無いよ。ふぅ」


「あらっ? お義母さん。図星突かれてご気分でも害しちゃったの? もうっ、テレ屋さんなんだからぁ」


「なんだい彩華。そう云う事なら晩の料理で勝負しようじゃないか」


「望むところですよぉ。お義母さん。それじゃぁ、私と云う女を賭けて」


「お前は何度その女ってやつを賭ければ気が済むんだい?」


「負けなければ良いんですよっ。負けなければねっ!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る