師匠のお宅にお邪魔します Vol4ー1


 師匠と彩華さんって本当に仲が良いのね。

 やっぱり心の深い所での信頼が揺るぎないのだって思うわ。

 巷ではよく云われてる、嫁と姑の軋轢なんて無縁な気がするわね。

 この二人の関係ってきっと「理想的な関係」なのだなって事は、直感的にあたしにも感じられるし。

 どこかお友達みたいに軽口を交えながら提案や意見を交換出来るのって、やっぱり憧れちゃうもの。


 掛け合いのようにポンポンお料理を決めて献立に仕立ていく様は、まさに打てば響くって形容がぴったり。

 きっと献立考える際にも食べる家族の顔を思い浮かべながら思案してるのよ。

 さっきのお昼のお料理みたいに、みんなで愉しめるような食事って考え方が前提に在るのだわ。

 紫音ちゃんと彩音ちゃんはまだ小さくて山菜は苦手みたいだから、代替案も出してバランスを取ったりしてね。

 タラの芽ってちょっとクセの在る食材だし、大人でも苦手な人は居るのだから仕方ないわよねぇ。

 逆に「この苦みが癖になるのよね」なんて云われたらホントびっくりだわ。


 何か良いわね。不思議と安らいで行くのよ。

 暖かい気持ちになるの。こう云う絆ってとても良いものね。


 彩華さんの何気ない提案から次々と発想が拡がってくのは、経験から導かれるお料理や食材等を関連付けてるのね。

 更にバランス良く偏らないようにメインとなるお料理と、それを引き立てるお料理を添えて献立を創るのって難しい事だと思うけど。

 このお二人は平然と当たり前のように出来ちゃうのって凄いわぁ。


 ここで今夜の献立を整理すると。


 先付 酢の物 材料は未定

 お椀 つくねの餡かけ

 冷やし鉢 キャベツ他の千切りに水菜のサラダ

 向付け サヨリのお造り

 焼き物 つくねの串焼き

 箸休め 焼き茄子の煮浸し

 揚げ物 タラの芽と春菊と柱のかき揚げ

 あと恐らくだけど、ご飯に香の物と汁椀は当然のように献立の他に用意するのだと思うわ。


 これだけのご馳走で、お料理を配膳する前の宴席に和紙を使って達筆で書かれた「お献立」が小さめのバインダーに挟んで置いて在ったら、高級懐石料理店か高級旅館の晩御飯って感じよね。


 それにしても普通のお家ご飯じゃまず作る事は無い献立だわ。

 加えて品数だって和食懐石のお作法に則って過不足なく揃ってるし。

 数えながら考えてたりしてたのかな?

 それとも当然のように感覚で解かってるのかしら?

 少なくとも偶然って事は無さそうだわ。

 この中であたしがお手伝い出来そうなお料理は……


 酢の物、サラダ、茄子の煮浸し、天麩羅とお魚を裁いて三枚卸しにする位かな?

 つくねもお手伝い出来そうだけど、真っ先にメインに据えてバリエーションまで在るくらいだからレシピが秘伝そうで……

 ご教授戴ければラッキーだし、是非お手伝いしてみたいのだけど。

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