師匠のお宅にお邪魔します Vol3ー2
「何か面白いモンでも在ったかい? 弥生」
「面白いって訳じゃ無いのですが、広々とした台所と業務用ストーブテーブルに圧倒されたと云うか」
「使った事は在るのかい?」
「はい。学生の頃のアルバイトで厨房仕事してましたので」
「そうかい。そうかい。そりゃぁ良い」
「あらっ。弥生さんったら即戦力じゃないの。頼りにしてるわね!」
「出来るだけお手伝いさせて貰いますので、お手柔らかにお願いします」
「こちらこそ。一緒にお料理出来るなんて愉しみだわ。宜しくね」
「さて。晩の献立はどうしよぉかねぇ」
「折角だから少し手の込んだお料理が良いんじゃない? お義母さん」
「張り切ってるじゃないか。そうだねぇ、弥生とも知り合った祝いみたいなモンだし。一丁、気合い入れてみるかい」
「そう来なくっちゃ! あっ。そうだわ。つくねなんてどうかしら? お野菜とか色々練り込んで、七輪で焼いた串焼きと餡を掛けてお椀の両方なんて、ちょっとしたご馳走になって良いんじゃない?」
「椀と焼き物、それに汁物もいけるねぇ。七輪出して焼くなら茄子の煮浸しもこさえるのも良いねぇ。それだと先付は酢の物か。揚げ物はタラの芽で良いかい?」
「紫音と綾音の事を考えて、揚げ物にタラの芽だけじゃ無くて、春菊と小柱のかき揚げを添えれば大丈夫だと思います」
「一品だと寂しくなるからねぇ。良いんじゃないかい。それに塩と濃い目の出汁で違う味も好みで上がって貰えば飽きないで食せるだろ」
「それならもう一つ足して、岩塩とお抹茶塩と天つゆで戴くのなんて良いわよね? あと……お造りは今朝お義母さんが仕入れてくれた旬のサヨリを捌くとして、栄養バランス的にサラダは必要だわ。千切りきゃべつに玉ねぎとピーマンを混ぜて軽く湯通した水菜を載せて……何か彩りが欲しいわね……無難なのはトマトだけど。ねぇ、お義母さん。サラダの彩り何か無いかしら?」
「パプリカなんてどうだい? 黄色と赤で華やかになるよ。所で下拵えした銀杏は在ったかい?」
「お椀の種に使うの? 少しなら在るわよ。パプリカなら綺麗ね。そうしましょ」
「凄い。あっと云う間に献立出来ちゃった。それも豪華なご馳走ばかり。まるで懐石御膳のようだわ。もしかして毎日こんな豪華な献立なんですか?」
「馬鹿云うんじゃないよ。毎晩こんなの拵えてたらこっちの身が持たないってなもんだっ。今日の晩は特別ってやつさ。豪華じゃないが心尽くしなんだよ。それに祝い膳ってのはこう云うもんさね」
「あたしの為に。ありがとう御座います。感動です。」
「なに云ってんだか。ふぅ。弥生、お前さんも手伝って貰うよ。扱き使ってやるから覚悟しときな」
「まぁまぁ、お義母さん。そんなに照れなくても良いのに。可愛らしいんだからっ。女はいつまでもどこかが可愛くないとねっ!」
「照れてなんか無いよ。親を揶揄ってる暇あるなら、ちゃっちゃと支度始めな」
「はぁ~い。あいあいさぁ~」
「全くぅ。何時からこんな嫁になっちまったんだか。往生するよ」
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