第二章 深い絆への羨望が憧れになる瞬間

師匠のお宅にお邪魔します Vol1ー1


「それじゃぁ璃央。あたしらは帰るよ」


「オッケー。今晩は暗くならない内に行けると思う」


「璃央君、それじゃね。お仕事頑張って。また晩に」


「璃央さん修理の方、お手数ですが宜しくお願いします」


「バッチリ仕上げますのでお任せ下さい。また晩にお会い出来ますけどゆっくりして下さいね」


「はい。有難う御座います。お言葉に甘えさせて貰いますね。では失礼します」



 彩華さんの運転で、ゆるゆると云った感じで静かに車が動き出す。

 紫音ちゃんと彩音ちゃんを起さないように。

 ゆっくり。そうぉっと。

 師匠は助手席で何やら考えてる風で、唇だけ僅かに動かしてる。


 本当に良く眠ってるわねぇ。可愛いっ。

 あたしはサードシートから覗き込むように、セカンドシートの双子ちゃんを眺める居るの。

 そっとスマホでカシャッって。

 やったわ。お宝ゲットよ。癒されるわぁ。

 スマホのホーム画像にしちゃおうかしら。

 間違って消しちゃわないようにフラグ付けときましょ。



「お義母さん。晩のメニューどうしましょ?」


「そうだねぇ、若いのが多いからねぇ。確りしたの主体にするとしようか」


「そうですね。まだ時間も在るから家の食材を視ながらでも考えましょ」


「良かったらあたしもお手伝いさせて下さい。少しはお役に立てると思います」


「お前さん料理も出来るのかい? それなら頼もしいねぇ」


「うん。そうだわ! お料理も出来たら花嫁修業も要らないんじゃない? いっそこのまま璃央君と……ねぇ? お義母さんもそう思うでしょ」


「そりゃぁ願ったり叶ったりだねぇ。弥生、ちょっと本気で考えてみるかい?」


「もうその手には引っ掛かりませんよっ。そりゃ璃央さんは良い人だと思いますが、それとこれとは別ですよぉ」


「あらっ? もう学習しちゃったのぉ? 次はもうちょっと手の込んだ変化球で行かないとね。ふふ」


「彩華さん! 不穏な単語がダダ漏れですって。もうぅ」



 師匠と彩華さんったら油断も隙も容赦も無いのだからぁ。

 でもあたしだって同じ手にはそうそうねっ。

 眼だけ笑ってほんの少し口角を上げた揶揄う気満々な、あのやる気。

 全くぅ……


 あたしってこんなに弄られキャラだったかしら?

 でも不思議と心地好いのよねぇ。

 和むと云うか、馴染むと云うか、安心すると云うか。

 そんな抽象的な何かな様な気がするわ。

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