名前に秘められた想い Vol1ー2
井戸端会議のようなお話しをしながら彩華さんはお茶の用意をして、湯呑みをそっと差し出すとゆっくりと席に着いたわ。
「あの、少し気になってるので質問しても良いですか?」
「何だい? 何でも聞いて構わないさ」
「しおんちゃんとあやねちゃんのお名前の事なんです。二人は双子ちゃんと云うのは聴いたのですが、あたしの漠然としたイメージで、双子ちゃんってお揃いみたいな名前の事が多いんじゃないかな? って。そのイメージとはちょっと違うので、お名前の由来とかをお聴きしたくて」
「そんな事かい。この娘達の名前は漢字で書くとそっくりなんだよ。『紫の音で紫音』『綾衣に音で綾音』なんだ。弥生、お前さんのイメージって云うんだっけ? それに当て嵌まるんじゃないかい?」
「そうですね。あたしの疑問が今、すぅっと胃の腑に落ちて行ったような想いです」
「でもね弥生さん。双子でも別の人格って云うかな? やっぱり個性があるのよ。共通する所は当然在るけど、それは家族や姉妹なら在って当然って感じの一部分なの。紫音も綾音も彩りの音って共通してるのだけど詠み方は違うでしょ? 『音』って漢字を『おん』と『ね』で詠ませる事で違う個性なのよ。って、主張のような願いみたいな事なのよ」
「わぁ……凄く素敵。個性を尊重しながら堅い絆で
「子供は成長してお互いに違う路を歩む事になるのよね。辛かったり苦しかったりする事も在る筈ね。そんな時にふぅ~って辺りを見廻して、そこに確かに感じられる絆が在ればまた起ち上がれるんじゃないかしら。そうだったら素晴らしいじゃない」
「良いです。凄く良いですっ! 路や個性は違えど確かな絆。同じ流れを
「そんなに真っ直ぐに云われたら照れてしまうわね。ありがとう。」
「聴けて良かったです。こんなにも愛情と想いの籠った願いで命名された二人のお名前の事。忘れられません。」
「弥生が大袈裟なのも個性の内なのかねぇ。まったく調子が狂っちまうよ。」
※ 同じ流れを掬ぶ>「同じ川の水をすくって飲む意から」縁のつながった人間どうしであることの喩えです。
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