意外な一面 Vol1ー2



「はいっ。おにぃちゃん たばこね」


「サンキュー紫音。どうしました? 弥生さん」


「あっ、あっ、あっ、ぁっ。ぃ、いえ。あやねちゃんに圧倒されちゃいまして……お恥ずかしいぃ」


「あぁ、こいつは何時もこうなんです。嫁さん気取りって云うか、小姑って云うか……まぁ」


「なる……あやねちゃんはですもんねっ」


「おにぃちゃん。こじゅーと? なに?」


「小姑ってのは……」


「……! 璃央さん待って下さいっ! あたしがっ! あたしが説明しますっ」


「そうですか? それじゃお願いします」


「はい。しおんちゃん、あやねちゃん。小姑って言葉はあまり良い意味で使われないから未だ知らなくても良いのよ。もう少し大きくなったらね。良いかな?」


「「うん。」わかったぁ」

 

 男の健康管理は女の仕事よっ!

 云ってみたい……

 一度でも良いから云い放ってみたい。

 それには旦那様か彼氏が……以下りゃ

 贅沢云わない……

 誰かに云ってみた……いぃぃ……



「璃央さん。素敵なお店ですね? スマホで写真撮っちゃいました。あたしには凄く参考になります!」


「そう云って貰えると嬉しいですね。ありがとう。もっとも婆ぁばからは『一体ここは何屋なんだ?』って呆れられてますけどね」 


「あたしってお仕事でインテリアのコーディネートもするんですけど、頑張ってもこんなに素敵に出来る気しないのがちょっと悔しいです。璃央さんのセンスが素晴らしくて羨ましいですよぉ!」


「なるほどねぇ。それで参考になると? でも弥生さん、それはちょっと誉め過ぎでは? プロの方から云われると自慢気にもなりますが、やっぱり照れますよ」


「この店内のインテリアとレイアウトのセンスは、もう芸術作品って云っても差し障り無いと思います」


「そんな事は……これを芸術なんて云ったら婆ぁばに鼻で笑われてしまいますよ。なんせ仏像を彫る師匠ですから」


「そうですね。お師匠様って聞きました。仏様を彫っていらっしゃるなんて素敵ですよね」


「何代目かは忘れましたが古くからの名前を継承してますよ」


「凄い。あたしったらそんな雲の上のような方とお知り合いになったなんて。感動です」


「そうあまり構えないで下さいね。婆ぁばは畏まられるの苦手みたいですから」


「やっぱりそうなんですね? そう云うシャイな所もとても素敵な方だと思います」

 


 璃央さんは終始苦笑交じりに、何となくバツの悪そうな感じで受答えしてくれた。

 あたし何か変てこな事でも云っちゃったのかしら?

 もっと自信満々に自慢しても良いのに「奥ゆかしい」と云うか「謙虚」と云うか、好感の持てる人柄が偲ばれるわ。

 やはり師匠の教えの賜物なのかしらね?


 それにしても師匠も師匠よっ!

 古美術の継承者なんて凄過ぎるにも程が在るわ。

 いにしえの伝統と技術を現在に脈々と伝承するお仕事。

 こう云うお仕事を出来る方の事を神々しいって云うのだと思うわね。

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