偶然の様な必然の出逢い Vol4ー2
「馬鹿な話しをしてる内に璃央が戻って来た様だね」
「はい。あの建物で修理するのですね?」
「そうだよ。小屋みたいなものだけどねぇ」
「ばぁば もってきたよぉ」
「ばぁば いつもの ここ おいてイイ?」
「あぁ 良いよ。紫音、綾音ご苦労さん。ちょっと座って水でも飲んでなさいな。あたしゃぁ弥生とちょっくら璃央と話して来るけど悪戯するんじゃないよ?」
「えーっ わたしも おにぃちゃんと おはなし したいっ!」
「わたしもー! リオにぃと あそびたいっ!」
「馬鹿言うんじゃないよ。璃央と仕事の話するんだから大人しくしてなっ」
「おとなって ズルいー ねぇー あやねっ」
「ねぇーっ」
「聞き分けないと二人共あとでお尻ぺんだぞっ?」
「「いやぁぁぁあああ」」
軽々とあたしのバイクを押して、穂含さんが小屋の様な建物に入ってくのが視えたわ。
あたしはバックパックとヘルメットを置きながら、可愛いくて微笑ましい遣り取りを聞いて口角が上がってしまったの。
しおんちゃんとあやねちゃんは仲良しさんなのね。
息もピッタリだし。
あのくらいの小さな子からすると大人ってズルいのね? ふふ。
それにしても師匠って凄いわね。
あんなにピシャッ! ってあたしだったら云えないもの。
ついつい甘やかしてしまうんじゃないかな?
いえ……甘やかしてしまうわねっ。抗えない! 無理っ!
しおんちゃんとあやねちゃんの云う事は何でも聞いてしまいそうよ。
あの云い方の可愛らしさったら反則レベルだもの。
「弥生行こうかね。付いておいでな」
「はいっ」
あたしは小走りに師匠の少し斜め後ろに近付き並んで作業場に向かったわ。
「婆ぁばって凄いですね? あたしだったらあんな可愛い云い方されたら甘やかしちゃいます」
「別に凄かないよ。あぁ云うのは、飴と鞭なのさ」
「飴と鞭……ですか?」
「何でも『過ぎたるは猶及ばざるが如し』ってやつでね。対をなす両翼なんだよ」
「なるほどです。勉強になります」
弟子入りして間もないのに思慮深い、含蓄の在るお言葉を頂戴しました。
何気ない所に潜む有難い教えを、いつまでも忘れない様に心の中にメモしときゃなきゃね。
早速メモっメモっと。
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