偶然の様な必然の出逢い Vol3ー1


 ジジッ……ジジッ……

「あたしも迷子になってたかも」

「そうか。二人で迷子になってたのか」

「そう。あたしはここから一歩も動けなかったけど迷子だったのよ」


 《まただわっ。なんなのよ! これって何かの前兆とでも云うの?》




「婆ぁば。お待たせ。いつも洗濯ありがとう」


「璃央もう良いのかい? どうせ洗濯機が洗うんだから礼なんて要らないよ」


「そりゃそうだけど……身も蓋もねぇなぁ。それより彼方あちらの方は?」


「そうそう! それが本題だよ。さっきなスグソコで知り合ったんだがバイク屋を探してたから連れて来たんだよ。ちょっと視てやっとくれないかい?」


「了解。ん? あれ? 車ドコ停めたの? 表に停めるなんてもしかして急いでる?」


「いや、今日は歩いて来たんだよ。紫音と綾音を連れてブラブラ散歩して来たんだ。そのお陰で弥生とも知り合ったのさ」


「弥生?  あの方が弥生さん? ってもう呼捨てか。相変わらずスグ親しくなるなぁ。関心するわ。よっぽど神経が太いのな」


「余計なお世話だよ。お前の神経が細くて持って回り過ぎるだけだろ? 男ならドォンと構えな!…………弥生。ちょっとおいでな」


「はい。お祖母様。すぐに」 


「おば……お祖母様? 婆ぁばの何処がお祖母様?」


「璃央。お黙り! それで無くてもこっ恥ずかしいんだから。あたしゃぁ」


 

 軽口で遣り取りする会話が風に乗って聴こえて来るわ。

 やっぱり普通に親子って感じだけど少しだけ違和感みたいなのが在るのよねぇ。

 でも何故か羨ましいって気がしちゃうかも?


 そんな逡巡をしてるとお祖母様に呼ばれた。

 あたしがお祖母様って呼び方すると、何処か窮屈そうに苦笑いするから、やっぱり改めた方が良いのかしら?

 でもねぇ、さっきお知り合いになったばかりの目上の方だし……


  

「お待たせしました」

 

「じゃぁ紹介からだね。こいつは璃央。見ての通りバイク屋さ。こっちが弥生さね」


「初めまして。神駆絽 弥生です。先程お祖母様に声を掛けて戴きお邪魔させて貰いました」


「こちらこそ初めまして。穂含ほふみ璃央りおです。ご丁寧な挨拶に恐縮します。早速ですがバイクの修理ですか?」


「そうなんです。タイヤのパンクだと思うのですが、修理して貰えますか?」


「勿論。取敢えず状態を見てからにしましょう。バイクは何処に?」


「はい。すぐそこの自販機の前に停めてます。これから押してきますね」


「いえいえ。僕が押しますよ。キーを貸して下さい。婆ぁば、サロンの方に案内して貰えるかな?  俺は弥生さんのバイク押して来るから」


「あぁ。引き受けたよ。璃央行っておいで」

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