偶然の様な必然の出逢い Vol1ー2

 

 こんな遣り取りの後、お祖母様は歩き出した。

 付いて行こうとすると……

 上目遣いでキュートなお願いされたのよ。


「ねぇね。わたしと てェ つないで?」


「あやね、ずるぅぅい! わたしも わたしもっ!」

  

 お祖母様はにこやかに微笑みながら

 

「もし嫌じゃなかったら繋いでやっとくれな」

 

 こんな可愛いお願いが嫌な訳ないじゃないですか。

 もうぉ!悶えてしまいそうだわ。

 どうしよぉ……

 顔がニマニマしちゃってるのバレバレだ。あたし。


 しおんちゃんは繋いだ手を元気に振ってぴょんぴょんってしながら。

 あやねちゃんはギュッと握って静々と。

 対照的だわぁ。この子達って。

 でも二人共キラキラした瞳で真っ直ぐあたしを見て来るの。

 まっ、眩しい……


 どうしよう。凄っごく可愛いわ。

 あたしにもこんな可愛らしい頃が在ったのかしら?

 きっとこんなに可愛くなかったわね。

 うん……悔しいけど。


 

「おねぇちゃん。おなまえ おしえて?」


「ねぇねの おなまえ わたしも ききたいな」


「良いわよぉ。あたしは弥生。神駆絽かみくろ 弥生よ」


「やよい? かみゅきゅろ やよい おねぇちゃん?」


「うーん……ちょっと違うわね。弥生で良いわよ。しおんちゃん」


「うん! やよいおねぇちゃん!」


「やよい ねぇね で いいの?」


「そぉよ。しおんちゃん、あやねちゃん。仲良くしてね?」


「うんっ!」


「はぁい!」

 

「お嬢ちゃんは、神駆絽 弥生って名前なんだねぇ。あたしゃぁ 月詠 じゅくってモンだよ」


「ありがとう御座います。お祖母様は月詠 褥さんと仰るのですね?」


「ふふ。お祖母様ってのは何ともガラじゃないよ。ここいらじゃ『婆ぁ』の方が通りが良いけどねぇ」


「そうなんですか? でも凛として凄く恰好良いです。あたし憧れちゃいます!」


「よしとくれなぁ。あんまり年寄りを揶揄うもんじゃないよぉ」


「揶揄うなんてとんでもないです」


「まぁ。怒ってる訳じゃぁ無いよ。ところで弥生って呼んでも良いかい?」


「はい! 構いません。改めまして、神駆絽 弥生です。宜しくお願い致します」


「敬語なんて堅っ苦しいのは要らないよ。あたしゃにゃ息子だけでねぇ。娘は居ないから。弥生、あんたみたいな年頃の娘は自分の娘みたいなものだもの」


「嬉しいです。褥お祖母様」


「ふふん。さぁ目的地に着いたよ。さっき云ってたバイク屋だ。璃央の奴を呼んで来るからちょっと待っておいでな」


「はい。ありがとう御座います」

 


 云うや否やスタスタと敷地の奥に向かって歩きだすお祖母様。

 歩いて来た路を振り返るあたし。

 さっきの場所から五十メートル位かしら?


『本当に目と鼻の先だったわね。びっくり。でもお祖母様に連れて来て貰わなければ見過ごしてたわ』

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