気侭な一人旅 Vol3ー2



 猛った脳筋アタシは暫く風を切って疾しる……


 そんな脳みそあたしも少しは冷えたみたいね。

 空冷式で良かったみたい。

 もし水冷式ならまだ脳筋絶対主義オーバーヒート中だったわ。

 いつの間にやら脳筋さんは影を潜めていた。


『ねぇ、そろそろ休憩しない?』

 《休憩しないと危ないわよ》

「うん。それもそうね。妥協も時には必要かな。よしっ! 妥協しよっ!」

 《そーよ。もう二時間は疾ってるのだから休憩しなさいな》

『缶コーヒーだって良いじゃない? 目的は休憩なのよ』

 

 こんな脳内会議の末に自販機を探し始めたの。

 だけどその途端、小さな違和感に気付いたのよ。

 

 何だろう? この違和感……

 

「エンジンじゃないと思うわ。だって気持ち良く疾ってるもの」

「サスペンション? 仕組みはあたしには難しくて解らないけど違う気がする……」

「でも……確かに違和感は在るのよね」


 そんなタイミングで都合よく自販機を発見。

 ウインカーを出して左に寄せて停車する。

 イグニッションキーでエンジンを止めて降車。

 ヘルメットを外し、そのまま車体を眺めながら一周…………

  

「んー。ちょっと視た程度じゃ解らないわね……」

「少し落ち着いてから考えましょ。缶コーヒーでも飲みながら」

 

 自販機で冷たいブラックコーヒーのボタンを押す。

 取り出すついでに頭の上に手を組んで腰を伸ばすようにストレッチ。

 軽い前屈と膝の屈伸して立ち上がり改めて辺りを見廻す。

 

「良い天気だわ。遠くに浮かぶ雲が綺麗ね」

「昨日までの憂鬱な気分が嘘みたい」

「あたしがいまココに居るって何かを残したいわ」

「そーだ。バイクも入れて空の写メ撮ろうっと!」

 

 スマホを持ってバイクが映り込む良いアングルを探して車体を下から覗き込むと。

 何かがキラキラと陽射しを反射してる。

 意識を向けてよく視てみると、それはタイヤに刺さった釘のような異物でした。

 それで『ピンっ!』って気付いたのよ。

 

「なるほどねぇ。これが違和感の正体よぉ。この釘みたいの刺さったからパンクしたんだわ」

  

 さぁて、どーしましょ?

 この近くに修理してくれるバイク屋さんって在るのかしら……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る