恋をした夏

篠宮玲

恋をした夏


私が先生と出会ったのは、高校3年生になった春でした


あの日は担任の先生が教室に入って来ると同時に

「お~い。みんな席に着け~!」

と言った

その担任の先生の後ろに付いて一緒に教室に入って来た男性がいた

すると

「みんなに紹介します!今日から、うちの学校で教育実習をする事になった一ノ瀬先生だ」

よろしくな!と担任が言った


「皆さん、初めまして!~~大学から教育実習に来ました、一ノ瀬です。よろしくお願い致します。」


それが私と一ノ瀬先生との出会いだった


一ノ瀬先生は、教育実習に来ていた大学4年生で、物理の先生を目指していた

物理が苦手な私はいつも授業に着いて行くのがやっとだった


そんなある日、授業が終わった後に

「鈴原さん」

と一ノ瀬先生に声をかけられた

「はい」

と私が返事をすると

「授業中、難しい顔をしていたけど分からない所とかあったかな?」

一ノ瀬先生に、これからの授業の参考にしたいから、分からない所は正直に教えて欲しい。と言われた


それから私は、放課後になると一ノ瀬先生の元へ行き、物理の分からない所を質問するようになった


きっと、あの時の私は一ノ瀬先生の事が好きだったんだと思う

でも、その気持ちを伝えたいとは思わなかった


一ノ瀬先生が教育実習に来てから2週間くらい経った時

クラスで変な噂が広がったんだ

放課後に一ノ瀬先生が私と毎日のように会っていて、付き合っているんじゃないかって…


このままでは、一ノ瀬先生に迷惑がかかると思った私は、その日以降先生に会いに行く事をやめた

そのおかげか、噂話もいつの間にか消えていた


授業中に先生と目が合うこともあったけど、気にしないでおこうと決めた


そんな感じで毎日が過ぎ、とうとう一ノ瀬先生が教育実習を終える日を迎えようとしていた


先生の授業が分かりやすかったから、いつの間にか私は物理が好きになっていた

でも、あの日以来、一ノ瀬先生とは1度も話さなかった

けど…最後に先生にお礼を伝えたかったんだ


一ノ瀬先生は最後の授業を終えると、クラスメイトに囲まれていて、私はその輪の中には入れなかった


だから、職員室へ行き、一ノ瀬先生のデスクに手紙を置いてきたんだ

もう…二度と会わないかもしれないから…

でも、ほんの少しの希望を込めて私の携帯番号を書いたんだ



あの別れから、何の連絡もないまま数ヶ月が経ち…

今は夏になりました

一ノ瀬先生は、元気にしていますか?

私は、たまにあなたの事を思い出しています

そして、進路も決めました

物理が苦手だった私が、あなたと同じ物理の道へ進もうとしています

応援して下さいね


「と、やっと書き終わった~」

この日、私は一ノ瀬先生との事を日記に書いていた


その時

~~♪~♪

私のスマートフォンが鳴った

スマホの画面をみると、見慣れない番号からの着信だった


「も…もしもし?」

と電話に出ると

「あっ!鈴原さん?オレ、一ノ瀬だけど…」

「えっ?」

「鈴原さん、久しぶり!元気だった?あの時は手紙ありがとう!」

連絡遅くなってごめん!と一ノ瀬先生からだった


「あの!私、一ノ瀬先生に話したいことが沢山あるんです…」

「もう、今は先生じゃないから…オレも鈴原さんと話したい…」


先生と生徒じゃなくなった今

私はもう一度、彼に恋をした


END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋をした夏 篠宮玲 @sora-rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ