第20話 凪
「そーいやドレーさんはさ、なしてこんな色々くれるんです?」
「ん?まぁ、趣味みたいなもんだねぇ〜、5スキップ」
「うぇっ、そっすか」
「帰省の時のお土産を配った時に、いたく気に入ってくれた子がいてねぇ」
2
「パス」「パス」「パスクタ」
「それが嬉しくって何度か持ってってるうちに」
2
「ジョーカー」
JOKER《ジョーカー》
「習慣みたいになっちゃってねぇ」
スペードの3
「うげ」
「ほい、8
10のスリーカード、3枚捨て
「あがり〜」
「初期手札でゴリ押された…」
「えい」
9のフォーカード
「待って話が違うぞ羽鳥ちゃん」
「そもそも話してないよ」
羽鳥ちゃんが戦利品のアイスを
「クタァ、お前別に興味ないみたいなこと言ってたよなァ?」
「スポーツでも学業でも遊びでも勝負ならば常に勝てと言われてきたクタ。」
「もう既に貧民か大貧民しかないが」
「君が大貧民クタ」
4のツーカード
「まさかお前」
「悪いね、タチメイ君。恨むなら席順を恨むクタ」
5スキップ
………
……
…
「うわぁぁぁてめぇなんか嫌いだぁぁぁぁ!お先失礼します、おつかれ様でしたァァァ!!!」
「おー、気をつけて帰りなよー。」
「やっぱり居た。」
「バレた?」
「帰るって言ってるのに、登っていくんだからスグわかるよ」
変身をしていてない、普通の女の子の羽鳥ちゃんが声をかけてきた。
「ホントに屋上好きだね」
「ま〜ね。」
俺が腰掛けていた段差に羽鳥ちゃんも座る。
「一口どう?」
「ど、ども」
「あ、気にする人?」
「いや全然」
隣に座った彼女からカップとスプーンを受け取る。
「セイちゃんはさ、魔法少女じゃなくなることって考えたことある?」
「……ないかなぁ。」
「そっか」
「羽鳥ちゃんはあるの?」
「君より随分長くやってるから」
はにかんで微笑む。
「この前の話を聞いて、また考えたんだ」
「あぁ、神様うんたらかんたらの」
「うん」
ファドの話していた俺が協力することで魔獣発生の原因を取り除けるという話。
「私はさ、結構気に入ってたんだ、ココ。」
「いいひとが多いしね。」
「うん、だから、なくなっちゃうのはちょっと寂しいかな。不謹慎なのかもしれないけど」
「セイちゃんは?」
「んー、いよいよただの女の子なっちまうかもだし、素でいられる場所が1個減っちまうからなぁ。俺も正直嫌かも。」
「そうだよね」
「セイちゃん、頼み事していい?」
「頼み事?」
「うん、空、飛んでみたい」
下から覗き込むようにこちらを見る。
「むり?」
「いや、できると思う。」
チョーカーについた宝石に触る。
「わぁ、クタさんがいなくても変身できるようになったんだ。」
「変身はね。力はアイツが居ないと殆ど使えない。」
俺はいつもの姿に変身していた。
クタに持っておけと渡されたチョーカー。これを使うことで1人でも変身できるようになった。
「せっかくだから私もしよっと」
羽鳥ちゃんは腰に結んでいた赤褐色の衣を解いて被る。すると、そこには魔法少女ルセニアがいた。
「なんかあったり、アイツらと出くわしたら助けてください」
「ふふっ、分かりました」
手を差し出す
「それじゃ、お手を
「とぉっ!」
「にゃっぷ!?」
羽鳥ちゃんが俺の首に飛びつき、俺はそれを支えるように抱える。
「え、こうじゃないの?」
「手を繋グダケデモ大丈夫ダト思ウ」
「え、でも私、セイちゃんみたいに跳べないし足も速くないよ?」
「……ええいままよ!行くぞ!」
「はーい」
屋上を駆け、踏みきって跳ぶ、空を舞う。普段と違うのは腕の中に重みと温かさがあること。
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