第19話 計画

 

――――

 ―――

 ―

草を踏む音、足音がする。


うっすらと目を開けると、彼方に払暁の兆しがあった。


「おーい、生きてるー?」


 ポテポテと歩いてきた羽鳥ちゃんが上から覗き込んでくる。。

 赤褐色のポンチョの下は襟付きのワンピース。


「いきてる」

「よかった、動ける?」

「なんとか」


「クタさんは?」

『タチメイ君と一緒に目が覚めたクタ。』

「そういえば変身したままだ。」

『変身を解くか、魔力不足で解けるまでは変身が継続されるクタ。』


 立ち上がり、辺りを見る。


「あれ?青色ハープーンは?」

「…さぁ?分かんない。」


 川に飛び込んでから彼女と共に結構な間流れ、なんとか陸に上がったところまでは覚えている。先に気がついてどこかにいったのか?


「あの後どうなった?」

「みんなでしっぽ巻いて逃げたよ。だからみんな無事。でもかなりの数の怪人を倒したからそれなりに満足みたいだよ。」

『オレクは何か言ってたクタ?』

「船の召喚が狙いだったんだって言ってた」

「あの影は?」

「影?」

「大鎌持った、怖いやつ」


 そう言うと、彼女はジトッとこちらを睨んで


「私」

「わたし?」

「それ、私」

「うそやん」


 確かに、 一瞬だけ羽鳥ちゃんかと思った。しかし、


「だって羽鳥ちゃんあんなにでっかくないし、怖くないし…」

「ポンチョと鎌持ってたじゃん。」

「それだけで羽鳥ちゃんだとは思わないよ!?」


 むしろ、鉄騎兵みたいになっちゃったかと思って、信じたくなかった。


「というか、あんなに強かったの?」

「30秒限定だけどね。それに、疲れて動けなくなるから普段は滅多に使わないよ。」


『ひとまず、移動するクタ。ここからなら組織の拠点が近いクタ。』

「え、だいぶ遠くない?」

『いつものビルだけが拠点じゃないクタ。』






 堤防の上を歩いてしばらく、水防団の小屋の中。


『この下クタ。』


 床にあった取っ手を引いて、蓋を開けると、地下へ続くハシゴがあった。






 緑色の世界があった。

 肋骨のように、柱が巡っていた。巨大な細胞のようなものが壁一面を覆っていた。中に薄緑の液体、なにか固形物が漂っているのが見える。そして、その中を血管のように大小様々なパイプが走っている。

 別世界の、巨大な生き物の中に居るような気分だった。




「ようこそ、立町君ファド。ファドはファドセイ、この組織の長を務めているファド。」


 フクロウが礼をする。

 こちらも名乗り返す。そして、どうしても聞きたくて、聞く。


「ここは、なんですか?」

「いい質問だファド。」


 フクロウは鷹揚にうなずき、語り始める。


〈※skip可能、文末に要約〉


「神の亡骸、君たちに戦ってもらっている、街を脅かす元凶ファド。そして、それを止めるべく、様々な処置を施している場所ファド。」

「神の亡骸?」

「そうファド、魔獣は昔からいた訳ではなく、この数年で突然現れたことはいいファド?」

「はい」

「それは、ある神がこの地に逃げ込んで、そのまま死んだことが原因ファド。神の死体から蛆虫のごとく魔獣が湧き、街で人を襲っているファド。」


 俺の知る理の外の、訳の分からない話だ。


「我々はこれを食いとめようとしたファド。しかし、止めることができないファド。そこである天啓が降りたファド。

 ‘元の世界に戻そう’

ファド。」

「できるんですか?」

「難しいファド。難しいが可能ファド。だからそのために我々は様々な準備をしているファド」

「何が必要なんですか?」

「1つ目がこの亡骸をある程度治すことファド。

 2つ目が治した体を動かすことファド。」

「治す?」

「これは実はそう難しいことではないファド。魔石は分かるファド?」


 魔石?


『出撃の後にシアに渡してるやつクタ。』


 ああ、あれ


「魔石を使えば結構簡単に治せるファド。しかし、2つ目、2つ目が鬼門ファド。というのも、神の心臓となるものを用意しなければならないファド。」

「ほぇー」

「これは実に難航したファド。しかし、奇跡が起きたファド。」

「はぁ」

「君ファド」

「え、僕?」


 なんで俺?


「君には神の心臓となるうる、とてつもない才能があるファド。

 君が協力してくれれば、残りの問題は1つ、魔石の確保だけファド。」




「要は、僕と大量の魔石があれが全てが解決すると。」

「その通りファド。」


 あぁ、なんだか大変なことになってきた。

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