第15話 包囲
俺はTS魔法少女、立町 晴明。
倒れている少女に声をかけると、謎の光に包まれ意識を失う。
謎の声を聞き、目が覚めたら…
TSしていた!
それからなんやかんやあり、俺は謎の声の主、クタと街に現れる怪異と戦っている。
最近では人型の怪異、怪人と呼ばれる存在まで出現。コイツらは非常に厄介で、最初にして最強の鉄騎兵には何度も苦渋を舐めさせられた。
幸いあそこまで強いやつは出きていないが、鉄騎兵の反省から、組織全体の装備更新や技術向上など強化がされた。
俺自身も魔力の扱い方を覚えたり、魔力制限かま引き上げられたり、装備が変わった。断じて暑くなってきたから衣替えをしたわけでない。
コートはショート丈のパーカーになり、中のシャツは袖がない。肩出しも生脚ももうなんか慣れた気がする。気がするだけだけど。
閑話休題、魔獣は一体なんなのか、怪人はどうして現れるようになったのか。疑問は尽きないが、俺は今――
「え、喋った。喋ったよな?」
『喋ったクタ。』
「実はコスプレしたただの人間じゃいよな?」
未知の経験にビビり散らかしていた。
何故こんなに驚いているのかというと、怪人は今まで喋ることがなかったためだ。何を言っても返答はなく、向こうから何かを言うこともない。故に、意識もなくただただ戦いを仕掛けてくるものだと思っていたからである。
「あ、元に戻った」
男の体からはキラキラと粒子が流れ、人の形に戻っていった。
一般人かもしれないと焦っていたため、俺はホッと一息ついて、胸を撫で下ろす。
このことは報告するとして、とりあえず、もうちょいマシなところに移してやろうか。
そうして、周りを見渡して、目が合う。
すぐさま彼女はドドドドドッという擬音が見えるような勢いで猛進してくる。
「待って!違う!」
「何が違うんですか!」
銃口突きつけてたのだってってコイツのせいだし、なんなら俺はコイツを人に戻してやったんだって!
とにかく、俺はその場から離れることにした。足下に一般人が転がってる状況で戦いたくない。
「立町ですぅ!!赤いの交戦中であります!!オーバー!」
『わかったわかった。落ち着け、ちょっと待ってろ。』
「居た!」
上に線路が道路通っているため、トンネルようになっている道。
黄色の少女は慌てたように大砲を取り出し…取り出し?今どっから出てきた?設営してこっちにぶっぱなしてくる。
急いで撃ったためか、逸れて後ろに着弾。地面が揺れる。
チラリと後ろを見れば両手に大盾を構え、なおも俺に突進する
だが、俺の方が断然足が速い。
ついでに、黄色の少女に向かって適当に牽制射撃、再装填に時間をかけてもらえればなおよし。
黄色の少女の顔がハッキリと分かる程の距離まできた。
肩から魔力が漏れている。1
弾丸は急所にぶち込まない限りコイツ何かと耐えやがる。だから、“ブレード”を展開し、このままの勢いで飛びついて銃剣でキメる。
描いた勝ちに眼前の現実が近いている。ほくそ笑んでしまう。
しかし、赤い少女が叫ぶ。
「ノナクを守って!」
黄色の少女の周りから大盾がせり上がる。すっかり黄色を覆い隠し、銃眼から砲口だけが覗く。赤色の少女が壁を、いやトーチカを作り上げてしまう。うせやろ。
「反則だろソレ!?」
黄色は1発当たればおk。
赤色は俺が逃げないように耐久。
俺は近くに着弾しないことを祈るしかない逆PK戦しつつ防御力カンスト赤色を倒す。
え、つらい。どうしよう。
……装甲をぶち抜く事は出来なくもないけど多分銃がぶっ壊れるかな。
じゃあ、と
反転、赤色に向かって走る。赤色の少女は立ち止まり俺を逃がさんとする。
更に盾が召喚、赤色の左右に展開され、俺の道を阻む壁となる。しかし、完全に閉ざされてはいない。真ん中、赤色の少女が立つあたりが空いている。
飛び越えようとしたら壁に突き刺さってたなかもな。
ボヤっと浮かんだ思考を頭から
「久しぶりに会ったら随分と成長したなぁ?邪魔だ、どけや、タコ!!!」
「焦りが透けてますよ!!」
渾身の初撃は当然のように防がれる。
蹴りや拳、タックルなどを織り交ぜてとにかく赤色を押し通ろうとする。
がしかし、赤色は無理に攻めず、ひたすら守りに徹する。
悪寒が走る。
すぐさま横に跳ぶ。
一瞬遅れて、轟音と衝撃が肌に刺さる。
「あっぶねぇなぁ」
「大人しくしてください。」
着弾先の赤色はピンピンしている。しかも生き生きしてやがる。この包囲はとにかく俺に不利だからだろうな。
「正義の味方がやることではないだろコレ。」
「どうゆう意味です?」
「怪人生産してるヤツらは流石に悪どいってことさ」
一瞬見えた赤色の顔に向かって1発。盾をすり抜けるが、赤色に当たらない。
「何言ってんの?」
「おや、違ったのかな?」
……回避ッ。
成功、黄色いの前より命中精度上がってる気がする。1発もあったことは無いが。
「人のなりした異形の怪物、知ってるだろ?」
「知りません!」
嘘つけよ。そんな訳はないだろ
「お前見えてだろ?あの鳥人間。それに毎晩あんなのが出歩いてんだ、知らねえはずがねぇだろ。」
赤色の少女と目を合わせる。
「怪物なんて知りません。だって伊達さんは」
盾を掴む。
「伊達さんは怪物なんかじゃありません!」
「なるほど」
盾に足を掛け、飛び上がる。
黄色の砲弾が一瞬前の場所に当たる。
「クロだね、じゃあもう容赦しない」
刹那、トーチカが燃え上がる。
「なっ!?」
動揺の瞬間、盾と盾の隙間に銃をねじ込んで撃つ。
「いっ!!?」
当たった。赤色が痛みに
倒れた赤色の顔に向かって撃つがこれは、残ったもうひとつの盾で防がれる。
ちらりと、見えた表情は驚愕に染まっていた。傑作だ。
慌てて顔を守ったせいで盾から脚がはみ出ていた。撃つ。
「いつでも、破れた。いつでも、倒せた。」
炎の光にあてられ、大鎌の影が地面に浮かんでいる。羽鳥ちゃんだ。
あの炎は羽鳥ちゃんの仕業だ。ただ、実はあれはただの目くらまし。砲撃がなくなったのは多分、トーチカを蔦と茨でグルグル巻きにしてあるからだろう。
「聞きたいことが山ほどある。大人しくしてもらおうか。」
俺は銃に弾を込めた。
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