2.薙刀剣士と街道の怪人 編
第14話 蠢動
初めてあの異形を見たのはいつだっただろうか。体は小さく、モゾモゾとしか動かず、そもそも滅多に見かけなかった。もちろん、襲ってくるなんてことなかった。しかし、気がつけば奴らから逃げ回ることが日常の一部になっていた。
恐怖した。奴らが人をたべる瞬間を見てしまったから。
苛立っていた。私を追い回し、脅かしてくるから。
寂しかった。家族や友人に言っても理解されなかったから。
世界が色褪せて見えた。気持ちが底に沈んでいて、足枷のように引き
諦めた。いつも逃げ込んだ神社に平然とあよ異形は入ってきたから。しかし、そのまま食べられるのは嫌だった。せめて一矢報いてやると立ち向かった。
私は救われた。セピア色の世界で彼女だけが色を持っていた。気持ちは高ぶり、心臓はドキドキと脈を打った。
彼女を追いかけた。命を刈り取る死神を見た。闇を駆ける悪魔を見た。それでも彼女を追いかけた。
彼女を追いかけるため、正義の味方と讃えられる異形を倒す人達に接触した。
私はそこで様々なことを教えられた。異形は魔獣、奴らを倒すと魔石という強い力を秘めている石が手に入る。これを手に入れるために魔獣を世に放ち、人を襲わせている集団がいると。
そんな邪智暴虐な輩を私は許せなかった。
そんな私にリーダーは適性があると告げた。そして、私は今―――
「シーゲア、ノナク、合わせて!」
「分かった!」
巨大な熊のような異形が振り下ろした爪を
シーゲアの後ろから飛び出し、振りかぶった薙刀を真っ直ぐ振り下ろし、異形の腕を切り飛ばす。
もう片方の腕をシーゲアが前に出て防ぐ。そして、シーゲアと共に横に飛び退けば、
「サラウンド!」
「ファイア!!!」
私とシーゲアを囲うように大盾が地面から出現し、ほぼ同時にノナクの大砲の砲声が轟く。
シーゲアが盾をどけるとそこには体の半分がない熊が横たわっていた。
でも、まだ息があるみたい。
熊は蠢いている。いや、それどころか失った箇所を治そうと傷口がボコボコと泡立っている。
でも、満足に動くことはできないみたい。
薙刀を構える。ちょっとワクワクしている。口角が上がっているのが分かる。少しはしたないから2人には見えないように背を向けて
首をはねた。
魔獣の体はキラキラと輝きながら、夜空に散っていく。
私は今、魔法少女といわれる存在になっている。
――――ダン!!!
光弾は見事に命中し、頭部をはじけ飛ばす。
「うっし、命中」
『うわぁ、魔力の暴力――
「!!」
後ろに向かって蹴りを放つ。確かな手応え。
どうやら男を蹴り飛ばしたようだ。ただ、反動で俺自身も鉄塔から落ちる。
その男は、腕が翼、足も鳥類のごとく厳しく、鋭い爪を持っていた。
1発でも当たれば儲けもんと連射、2発も命中。
男はきりもみ回転し、俺は魔力を使って姿勢を整え、着地に備える。
男はそのまま地面に落下。叩きつけられる。仰向けに跳ねた男の上に俺は
「らぁぁ!!!」
「ごぉふっ…!」
着地、衝撃に耐えかねて男の口から空気が漏れる。
「いや~びっくりした。てか、よく、登ってきたね?大変だったろう?俺も苦労したよ。でも、最後に油断しちゃったね。聞こえちゃったよ。」
驚いたためか、ベラベラ喋ってしまう。ついでにリロード。
「ま、でも死んじゃう訳じゃなく、むしろ元に戻れるんだ。そう恨めしそうに見ないでくれよ。」
男の憎しみに溢れた目を見ながら銃口を向ける。
「お疲れ様」
「…ちくしょ」
―――ダン!!!
…………。
……。
「しゃ、喋ったぁぁぁ!!!!??」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます