第4話

「これ」



 花火も終わり、食べ物も全て食べ終わった、僕は彼女に手を差し出した。



「これっ」


「今日の記念」



 屋台のクジで当たった景品だ、プラスチックのペンダント、対象年齢は六歳ぐらいと思わせるオモチャだ。


 笑いながら「ありがとう」と、受け取ってくれた中桐さん、それから僕達は帰った。



「また、学校で」


「うん、学校で……」



 中桐さんの声が、少し涙声になっていた気がした。

 あんなのが、そんなに嬉しかったのだろうか?






 二学期の始め、僕の隣には机がなかった。それに対して、誰も不思議がらない。



「なあ、中桐さんの席は?」


「中桐? だれそれ」



 何が起こっているのか、授業が始まっても誰も中桐さんのことを今までなかったかのように無視している。



「先生、中桐さんはどうしたんですか?」


「ん? 中桐? なにを言っているんだ高取」


 僕は授業を抜け出した、誰も中桐さんの事を覚えていない、始めから居なかったように。


 あの神社へ行けば何か分かるかも知れない、祭りの日、キスを交わしたあの神社へ行けば……



 階段をかけ上り、境内を走る、僕の足が止まった場所には、あの日あげたペンダントと、そのとなりに、一匹の蝉の亡き姿があった――――





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初めての彼女の秘密 OFF=SET @getset

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