紅い心臓

中村翔

紅いハート


 脈動。心臓が鼓動する。

 俺の心臓を穿てる者などありはしない。

 俺は今組織のトップに立っている。

「おい。例のアレはどうなった。」

「はい!アレの複製品の製造は順調です!」

 誰しもが感じる。

 この胸の火は紅く轟々と燃えている。

「しかし、アレは本当に安全なのかね。」

「アレだろ?人の心臓の様に紅い。」

「ああ。それで鼓動してるってんだから。」

「うへー。怖え怖え。」

「元々アレはある人物の心臓らしいぞ。」

「へー。一体誰の。」

「俺だ。」サクッ。ザシュー。

「これで447人目。」

「残り999人。キリがいいな。」

「おいっ!なにをしている!?」

「おっと、そこ踏むなよ?」

「なに!?」バシュ!

 男が踏むと横からボウガンの矢が飛んできた

「448っと。」

 男の死体から装備を剥がすと。

「こんなもんか。潜入開始。」

 さっきまで男が身につけていた物を身につける

 ーーー地下1階ーーー

 男は特殊な能力を発動していた。

「コチラ地下1階。ドウゾ。」

『コチラ本部。倉庫西と連絡とれず。』

「了解。1人向かわせる。」

『了解。連絡を忘れるな。』

 ガチャ。

「ふー。なにやってんだか。」

「ん?どうした?」

「倉庫の奴が連絡不足。1人送れってさ。」

「めんどうだな。いかんぞおれは。」

「まあ、しばらくして行ってみるさ。」

「だがその必要はない。」ザシュー。

「なっ!」パンッ。パンッ。

「遅い!」ザンッ。ドサッ。

 ガチャ。

「コチラ地下1階。ドウゾ。」

『どうした。倉庫西はどうだった。』

「ああ。"問題なし"だ。」

『そうか。任務を続けろ。』

「わかった。」ガチャ。

 この施設の役割。それはある物を作ること。

 運良く地図を入手できた。

 ここを通ってここを行くとここにつく。

 最短ルートはこうだ。

 しかし男の目的は組織の無力化。

 少しでも勢力を残すと潰すのが面倒になる。

 地図によれば全てのルートを通る道がある。

 ーーー地下1階南ーーー

「コチラ地下1階。問題なし。」

『ザザー。ザッ。ザザー。』

「?。コチラ地下1階。ドウゾ。」

『ザザっ。ザザっ。ザーーー。』

「おいっ!本部が応答しない!」

「ああ。それは俺のせいだな。」

「えっ?」ザンッ。ドサッ。

「おいどうした?なにか物音が...」

「いや。なんでもない。それよりアレ。」

「アレ?なんのことだ?」

「お前のロッカーだよ。」

「ロッカー?そういえば時計の様な音が。」

「1時間後に開けて下さいってさっき。」

「そうか。ご苦労だったな。時間指定とは」

「ああ。お前に大層ご執心だったからな。」

 ーーー地下1階東ーーー

 ザシュ。ザシュー。ザシュー。

「528人目。」ザンッ。

 東側もラス1だ。

「ほう。貴様か。この惨状の主は。」

 !!。地下1階のリーダーか。

「悪いがお前にも参加してもらう!」

「ふっ。」

 リーダーの腕がみるみるうちに盛り上がる。

「貴様には複製品のテスターになって貰う」

 リーダーが飲んだのはここの複製品か。

 紅い心臓。どれほどのものか。

「試させてもらう!」

 リーダーが腕を伸ばすとありえないほどのびる。

 バキィ!

 柱を素手で握り潰す。

「!。(間合いが広い...!)」

 これが複製品の力か。

「知っているか。複製品は本物と違い。」

「使う人間を選ぶってことをよォ!」

 リーダーの腕の死角へと回り込む。

 するとリーダーは逆の腕を伸ばす。

 ガガガガ。バキィ。ドォーン。

 ショベルカーのように地面を抉る。

 バキィ。

(くっ!腕が...)

「ドオシタ?これで終わりとでも。」

「言うと思ったかー!」

 折れた腕を引き千切り投げ飛ばす。

 ドスっ!

「あ?ナンダこれ?」

「俺の使っている刀だ。」

「こんなもので俺がトマルトデモ。」

「ああ。止まらないだろうな。」

「だがお前の弱点は見抜いた。」

「お前の伸びる腕。片方伸ばすと片方縮む」

「それがどうしたァ!!!!」

 グッグググ。

「伸びないだろ?刀がつっかえ棒になって」

「間合いはこれまで!喰らえ!」

 壁ギリギリの距離からボウガンを二発。

「グォォォ!メガァ!」

 リーダーに近づき刺さった刀をとる。

「サヨナラだ。」ザンッ!ザンッ!ザシュー。

 リーダーの両腕を刎ねた。

 さて地下はコイツで終わりか。

 残りは本部と2階。

 二階はいいとして、本部は叩かなければ。

 ーーー1階北本部ーーー

 この階段を登った所が本部か。

 そろそろロッカーを開けている頃か。

 ドォーン!

 ビィー!ビィー!ビィー!

 地下の東で爆弾が爆発した。

「おい!いそげ!商品を詰め込むんだ!」

 一階東の二階部分が崩れたらしい。

 ザンッ!

 一応残存勢力を狩っておこう。

 ザンッ。ザンッ。ザシュー。

「777人。二階に半分ほどいたはずだから」

 あと十数人ってとこか。

 味方の格好をしてるだけで安心するな。

 まああとは建物の倒壊で終わる。

 俺はさっき切った親指で指紋認証をくぐる。

 ここをくぐると、この施設からおさらばだ。

 ゴゴゴゴゴ。

 建物が崩れ、門が開く。

 門をくぐると任務オーバーか。

 すたすた。

 バンッ!バンバン!

「おめでとう!検査は終わりだよ。」

 ライトの光が当てられる。

「ここは...手術台?」

「君はOJAつまりバーチャルテストに合格した。もちろん君の生活は保証しよう。安全は保証できないがね。」

「ぐぁっ!」

(心臓が痛い!)

「君の心臓は3回のOJAに耐え進化した。」

「我々の血液を君の心臓に通すことにより」

「我々は永遠の生命を手にした!」

「素晴らしい。人類の新たな一歩だ。」

「君は何もしなくていい。」

「ただ心臓を動かしているだけで。」

 そうか。俺の、俺たちの心臓は。

 紅いだけの心臓はあとになってしまったのだ。

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紅い心臓 中村翔 @nakamurashou

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