第2話 色恋沙汰なんて下らない
元カノ二人と手芸部なんてものをやらなければならなくなったのには色々と理由がある。
それは俺がまだ高校に入学して間もなかった頃のことだ。
教室に入るなり、俺はあるイベントに遭遇してしまっていた。
(ちょっとぉ……なんで居るの女子ぃ~……)
俺は思わず心の中で女子口調で突っ込みを入れてしまった。
(このままでは将来オネェになってしまうかもしれない……いや、そんな心配ないけど)
あまりにも衝撃的なものを目にしてしまい、俺は動揺していた。それはもうバクバクに。
何故なら俺の教室に、伊色と依代という元カノが二人居たからだ。
「……」
「あ……」
それまで伊色と依代は二人で何やら話していたようだが、教室に入ってきた俺の様子を見た途端、その会話を中断したようだった。
どこか気まずい様子で俺から視線を逸らす伊色と、俺の方を見ながら自分の手を強く握る依代。
誰がどう見ても知人にしか見えないこの状況に、クラスの連中から初日にも関わらず好奇の目に晒されてしまう。
「……」
とはいえ、すでに他人である俺はそんな二人の横を通り過ぎつつ、ひとまず席へと座る。
伊色と依代、二人と付き合っていたのは中学の時だ。
だが、二人とも俺に理由を告げずに突然別れを告げてきた。
そりゃもうショックだった俺はそれ以来こいつらとは距離を置くようにしていた。
最初は何かの間違いなんじゃないかって何度も説得しようとしたが……そんなものは全て無駄だった。
そもそも向こうから完全に距離を置かれていたし、だから俺も空気を読んで距離を置いて中学を卒業したんだ。
(それなのに、なんで……ここの高校、地元から離れてんのに……)
俺の進路については付き合っていた時に話したことがあった。
伊色は頭が良かったし、この学校の偏差値でも問題なく受かることはできた……だが、逆に言えばもっと良い高校に入学することもできたはずだ。
それに、依代については運動はできるが勉強はそこそこだ。
ここに入るにはそれなりに頑張る必要があり、しかも中学時代にバスケで活躍していたことを考えるとそっちに進学すると考えていた。
(……そういや、俺の進路を話したことはあったけど……あいつらは自分の進路のことは話してくれなかったな)
その時に進路が決まっていなかっただけなのか―それとも、自分が彼氏だと思われていなかったのか。
伊色と依代は仲が良く、こうして一緒に居ることは多かった。
いわゆる幼馴染、というものらしいが……俺はその関係についても詳しくは知らない。
(……結局、俺はあいつらにからかわれていただけなのか?)
どれだけ考えても答えはでない。
その答えを持つ二人は、ただ遠巻きに俺を眺めているだけだった。
―本当に、色恋沙汰なんて下らない。
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