契約。~ずっと傍に~

契約。~ずっと傍に~

「行くか…」

 ふと呟いて、世界は無機質な何もない空間からごちゃごちゃした昔、生きていた世界に戻った、のかな…。

「ん…」

 寝返り打つ姿を見て、相変わらず愛おしい。未練があるとすれば、彼と楽しく普通に生きていたかった。でも、叶わなかったけど、ね。寿命はヒトそれぞれだから。

きょうちゃん?」

 久々に、彼の名前を呼んだ。

「呼んでおいて、その起きないとか…ないでしょ…」

 呆れて寝ている京ちゃんの隣に寝転ぶ。

 京ちゃんらしいけど。

「ん…ダメだよ…」

 何の夢見てるのかわかんないけど、そこに俺は出てないような気がするので、再会に喜ぶよりも夢の誰かへの嫉妬が上回り、心地よく眠っている彼を思いっきり抱きしめた。

「……っ?!」

 ようやく起きた、か…。

「おはよう。京ちゃん」

「お、おはよう…」

 驚き過ぎて、普通に挨拶する京ちゃんに、思わず笑ってしまった。

「もっと、驚いてよ…」

「うん…」

 そう言って、目を塞いだ京ちゃんは再び目を開けて、俺を凝視する。

「チカ、ちゃん…?」

「そうだよ」

 正解。と言って、再びギュッと抱きしめた。

「嘘だろ…」

「嘘じゃないよ」

 確かに今、京ちゃんの目の前には俺がいて、京ちゃんのぬくもりがあるから。嘘じゃない。

「俺、過労死したのかな…」

「死んでないから、安心して…?」

「そっか…」

「そうだよ…」

 抱擁するくらいで、構わない。

 そう思ったけど。ふと思い出した。

「そう言えば、今、一人なの…?」

「う、…うん…」

 その間は、何?

「十年も一人ってことないでしょ?」

「一人だったよ…」

「嘘だ」

「嘘じゃない。なんなら隈なく部屋を調べてもいい」

 その自信満々に嘘吐くのって、どうなの?

「じゃあ、調べるよ」

「お、おぅ…」

 どうやら、父さんとはヤッてないようだ…。安心したけど、ちょっとそれって、さ…。

「京ちゃん、もしかして…」

「そう、だけど?」

 何か問題でも?って顔してるけど。

「ダメだよっ!!」

「ん?何が?」

 クールなのと枯れてるのは違うからっ!!って、言ったところで「はぁ?」って顔するからやめとく。

「あ。いいこと思いついた」

「遠慮します」

 即答された…。軽く傷付いたんだけど。もう帰ろうかな…。

「チカちゃん、性欲はあるよ」

 安心して。と、眠りにつく京ちゃんの体を揺さぶる。

「睡眠欲に負けてるよっ」

「……ん…」

 目を閉じながら微笑む京ちゃんの唇にキスをした。

 これは、契約。

 ずっと一緒にいるよ。見えなくても。ずっと一緒に…。

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契約。~ずっと傍に~ @tamaki_1130_2020

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