第250話 思い立ったが吉日
---ラサミス視点---
「もうレベル47!?」
オレの前に立つ茶髪のショートヘアの女竜人スカーレットがそう叫んだ。
まあスカーレットが驚くのも無理はないよな。
だってオレが
というか魔族の幹部って凄ええな。
とてつもない
「というかラサミスくん、魔族の女幹部倒したって本当?」
「はい、一応オレが止めを刺した形になります」
「オーノー、これは流石の私も予想外だわ。
というかラサミスくん、今からウチの師範を呼ぶよ!
何故なら私のレベルは35だからさ。 もう既にキミの方が上なのさ。
苦労して
上げたレベルをキミはたった数日で抜いたというわけさ、アハハハッ……」
そう云って師範代でもあるスカーレットは「アハハハ」と乾いた笑い声を上げた。
いやまあその気持ちも分かるよ?
オレだって自分の現状に戸惑っているもん!
「じゃあ私は少し師範を呼びに行って来るよ」
「はい、いってらっしゃい!」
そしてギルド内の事務所で待つ事五分余り。
師範代のスカーレットがやたらガタイの良い褐色肌のヒューマンの大男を連れ来た。ヒューマンにしては随分デカいな、身長190は軽く超えてそうだ。
服装は緑の革ジャケットに黒のシャツ、下は緑のズボンという格好だ。
するとその黒髪のソフトモヒカンの大男がこちらをじっと見据えた。
成る程、品定めの最中ってとこか。
そしてソフトモヒカンの大男が威勢の良い声で話仕掛けてきた。
「よう、お前さんが期待の
年末の無差別級フィスティング大会は生で観たぜ。
ありゃ酷い判定だったな、お前さんもあんな状況でよく勝ったよ。
あ、オレは師範のバルバーンだ。 レベルは50だ! 以後、よろしくな」
バルバーンはそう云って右手を差し出してきた。
オレも右手を前に出して、その大きな右手を握り返す。
「しかし観た感じ結構良い感じに筋肉がついてるな。
所謂、細マッチョってやつだな」
「そうですかね?」
「おうよ、まあそんな話はどうでもいいわな。
お前さんのスキルの割り振りについてだな。
じゃあ悪いけど、冒険者の証を見せてもらえるか!」
「はい」
オレは自分の冒険者の証をバルバーンに手渡した。
するとバルバーンは「う~ん」と唸り、オレの冒険者の証を凝視する。
「ラサミス、お前は随分と色んな
成る程、格闘だけでなく刀術も使えるのか。
おまけに回復魔法も中級まで使える、こりゃなかなかの万能型じゃねえか!」
「……万能型?」
「おうよ、まあ基本的にお前のように色んな
器用貧乏になりがちなんだが、今の状況は器用貧乏からオールラウンダーの
万能型になりつつある。 こりゃなかなか大したものだぜ!」
「そうなんですか?」
「ああ、まあ御託はいいよな。
じゃあ今のお前にはスキルポイントが……100もあるじゃねえか!
こりゃスゲえな、でどのようにスキルを割り振りたいか云ってみな?」
「そうですね、とりあえず100ポイントもあるから、
刀術スキル、回復魔法スキル、パッシブスキルを上げたいですね」
「そうか、じゃあまず何を上げたい?」
「まずは……上級級の回復魔法スキルを覚えたいですね」
「オーケー、んじゃそして35ポイントを『回復魔法』に振ってみろ。
そしたら上級回復魔法の「ディバイン・ヒール」を覚える筈だ!」
「了解ッス」
オレはバルバーンに云われるまま、35ポイントを『回復魔法』の項目に割り振った。それによって新たに中級治療魔法『キュアライト』を覚え、
『短縮詠唱の速度アップ』と『回復魔法の回復量アップ』を習得。
更に上級回復魔法『ディバイン・ヒール』を習得した。
おお、本当に上級回復魔法を覚えたよ!
これはちょっと嬉しいな、確かに少し万能型っぽいな!
「さてこれで残る65ポイントどうする?」
「そうですね、上げるならば刀術スキルとパッシブスキルだけど、
バルバーンさんの眼から見て、どちらに比重を置くべきと思いますか?」
「う~ん、それは人によって違うからなあ。オレは格闘に全振りに近い形の
お、なんかちょっとカッコいい感じの技名だな。
どういう能力なんだろう、と思ってるとバルバーンが親切に教えてくれた。
「
ほう、解除系の
これは面白いかもしれん。
少なくとも『暁の大地』の団員は使えない能力だ。
対幹部戦でも使えそうな
「分かりました。 じゃあ35ポイントをパッシブスキルに振ってみます」
「おうよ!」
そしてオレはパッブスキル『
「おっ!? なんか身体に力が漲ってきたぞ!?」
「ああ、パッシブスキルでステータスが強化されたからな。
だいぶパワーがついたと思うぜ、後スピードも増してるだろうさ」
なんというか自分の身体じゃないみたいだ。
なんか全身から力が溢れ出る感じだ、良い感じだ。
「じゃあ残り30ポイントは刀術スキルに割り振ってみろよ」
と、バルバーン。
「はい、やってみます」
オレは冒険者の証を指で操作しながら、
残りスキルポイント30を刀術スキルに全振りした。
それによって中級刀術スキルの『
「おお、色々覚えました!」
「ん? どれどれ見せてみろよ?」
「こんな感じです!」
オレはそう云って自分の冒険者の証をバルバーンに見せる。
するとバルバーンは「ほほう」と僅かに口の端を持ち上げた。
「六属性の属性技を覚えた上に、英雄級の刀術スキル『燕返し』を覚えたか。
いいじゃねえか、まさに攻防に優れたアタック・ヒーラーって感じだ。
属性技を組み合わせると、単独連携にも使えたりするぞ。
なんならお前独自の
「え~とそれって属性技の連続攻撃で単独連携を起こす
「まあ実際は難しいだろうな。 でもお前さんは並の
バルバーンはそう云って白い歯を見せて、ニヤリと笑った。
まあそう云って貰えるのは嬉しいが、
でも概念としては面白い。
一考の余地はあるだろう。
「まあ今すぐ決めろとは云わねえよ。
でも考える価値はあるだろ? まあじっくりと考えてみな」
「はい、それじゃ今日はこれで帰ります」
「おう、いつでも来いよ」
「じゃあね、ラサミスくん」と、スカーレット。
「はい、お二人ともありがとうございました」
オレはそう云って踵を返した。
しかし今日一日で随分と成長した気がする。
まあレベル47になったし、スキルポイント100も振ったからな。
でもバルバーンも云ってたが、オレも徐々に万能型になりつつあるのか。
ちょっと前までは、メイリンに「器用貧乏」と馬鹿にされていたが、
いつの間にかオレも成長したようだな。
さてそろそろ夕方だな。
とりあえず
そしてオレは鼻歌を交えて、上機嫌で帰路に着いた。
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