第148話 掛け声は発砲!
一方その頃、左翼を任された
肉体的には四種族の中で一番虚弱な
前線にはレビン団長やロブソン・バンテ、ジュリー・シュナイダーといった
仕方なく上空に待機していた竜魔を初めとした魔法軍の飛行部隊が盾になるべく、地上に降りて、
初級から中級、上級と様々な属性の魔法を撃ち続ける
そうした戦闘が何度か繰り返され、とうとう魔王軍の右翼部隊も陣形を維持するのが困難となった。 レビン団長はそれを即座に見抜くなり、次のような命令を下した。
「よし、三匹一組となって前線に突撃せよ! 基本は
レビン団長は右手を上げて、そう号令を下した。
すると
「さあ、楽器を奏でて、みんなを支援だニャン! 『覚醒のスケルツォッ!』 !」
「了解だニャン! 『覚醒のスケルツォッ!』 !」
中衛の支援職・
「ラモン! 私とロブソンがあなたを護るから、あなたは近距離射撃で敵の術者を始末してもらえるかしら?」
「へい、へい、へい、了解したぜ。 オレ様は今すごくアングリー状態!! オレ様達、
相変わらずよく分からないテンションでベラベラと喋る
「……ねえ、あなたって普通に喋れないの?」
この場においても、いつもと変わらないラモンに呆れると同時に素朴な疑問を持つジュリー。
「それは難しい問題なんだなぁ! でも心配する必要はナッシング! 何故ならオレ様は、与えられた任務は必ず果たすからだ! こんな喋り方だが、仕事に関しちゃ真面目だぜ! だから心配無用サッ!」
「……あ、そう。 じゃあ好きにすれば?」と、呆れ気味にジュリー。
「おう! ご要望通り好きにさせてもらうヨッ!!」
「二人ともお喋りはそれくらいにしておけ! 前方に術者を発見! ラモン、ありったけの銃弾をぶっ放すんだ!」
と、マヌルネコの
すると
「へい、へい、へい、オフコース!! さあ、お前等、パーティの時間だぜ! これがオレ様からお前等に送るプレゼントだぜ!
と、叫びながら両手に持った
更に他の銃弾も同様に術者の眉間、あるいは喉元などの急所を綺麗に撃ちぬいた。 瞬く間に四人の術者を射殺するラモン。
「まださ! まだ終わらんさ!
更に銃弾を放つラモン。 そして放たれた銃弾がことごとく術者の急所に命中。
これには敵だけではなく、ジュリーやロブソンも驚きの声を上げた。
「ら、ラモン。 あなた、意味不明の性格だけど、射撃の腕は超一流なのね!」
「う、うむ。 正直ただの変な奴と思っていたが、射撃に関しては天才的な
ジュリーとロブソンは似たような感想を述べた。
しかしラモンは気にする素振りも見せず、
「あ、あの変な
「わ、分かったぁっ! 喰らえっ! ――シャドウボルト!」
そう言いながら、敵の術者の一人が初級闇属性魔法をラモンに向けて放った。
漆黒の波動が素早く放たれたがラモンは、華麗に上空にジャンプして回避。
「スロウ、スロウ、スロウ過ぎるぜ! そんなんじゃこのオレ様は捕まらないぜ。 そんなお前にお手本を見せてやるよ! ――スナイパーショットォォォ!!」
ラモンは空中で身体を捻りながら、右手に持った黒い
「な、なんなんだ……あの
「所詮、
「多少の犠牲を払っても構わん! あの
ラモンの神業を見て、流石に敵も全力で警戒し始めた。
しかし当のラモンは慌てることなく、右手を前に突き出した。
「それじゃそろそろエスケープの時間だぜ! お前等、また機会があればシーユーアゲイン!!
そういうわけで! 『
ラモンはそう言って、頭にかぶった黒いテンガロンハットのつばを右手でくいっと押し上げた。 堂々過ぎる逃走宣言に敵だけでなく、ジュリー達も唖然とした。
そんな中、ラモンは初級風魔法『
「な、何だ、アイツ!? 何、堂々と逃げているんだ!?」
「ど、どういう性格してるんだ!?」
と、呆れる敵の集団。
いや呆れたのは敵だけではない。 味方も同じであった。
「はあぁっ!? 何、一人で逃げてるのよぉっ!?」
「……分からん。 奴が何を考えているか、まるで分からんわ」
と、ジュリーとロブソン。
「ちょっと、ロブソン! 敵がこちらに狙いを定めてるわよ!」
「うおっ……これはヤバそうじゃな。 ワシ等も逃げよう!」
「も、もう! なんなのよ!」と、ジュリー。
ジュリーとロブソンは、『
だが結果的にラモンは、一人で敵の術者を九人射殺するという大手柄を上げた。
他の三匹一組の
敵の術者を確実に葬り去っていく。
その結果、敵の右翼部隊は戦線を維持できなくなり、後退を余儀なくされた。 その結果、想像以上に善戦していた魔王軍の左翼部隊も味方である右翼部隊を護りながら、拠点である港町クルレーベへ逃げ帰るという選択肢を選ぶことになった。
その後、連合軍はヒムナート平原で大規模な野営地を設営した。
戦前の予想に反して、アイザック率いる右翼部隊は敵のゴーレム軍団に苦戦。
その一方、
これによって
対する右翼部隊も左翼部隊に負けじと、士気を高めつつあった。
だが魔王軍もそれに対して、手をこまねいているばかりではなかった。
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