第44話 火事場泥棒のような真似
金鉱山には監督役の
だが金鉱石を一々選鉱している余裕はなかった。
そこで魔法で選鉱及び
本来なら手間がかかる選鉱、製錬といった作業が、魔法や錬金術で一瞬でできるからである。
そしてここレバルでもそういう仕事を請け負っている
仕方なく
残りの四人は、条件付で従うと言い出した。
そしてそれで初めて知ったのだが、このドバネルク金鉱山やレバルだけでなく、
「迂闊だったわ。 考えてみればあり得る話よね」
転移石や
魔封結界が張られている場所では、基本的に魔法は使えない。
だが全ての魔法を禁ずる魔封結界はかえって効率が悪くなる。
故に魔封の対象を転移石や
これらのような事例は、エルフ領でも存在した。
例えば人の行き来が多くて、多くの交易品が搬出される港町では、このような魔封結界が張られているのは、周知の事実。
「そういうわけだから、あんた等に従うなら、俺達の身の保障をして欲しい。 最低限条件として、転移可能な安全地帯まで俺達も同行させてくれ。 そうじゃないと俺達も従うわけにはいかん」
彼らの出す条件は当然のものといえた。
だがそうなると、手持ちの転移石では数が足りない。
用心の為に必要以上に転移石を用意していたが、荒れくれ連中やここに居る四人の
仕方ない。 方針を変更しよう。
荒くれ連中は、土壇場で全員始末しよう。
どうせ生きてても、他人に迷惑をかける連中だ。
更に何処かで今回の件について口を滑らす可能性もある。
ならば口封じも兼ねて、始末した方が効率が良い。
少々あざといが、今更善人面しても仕方ない。
「いいわ、貴方達四人の転移石は事前に用意しておくわ。 安全地帯への同行も認めるわ。 ただし転移石を渡すのは、安全地帯に着いてからよ。 これが私達の出す条件よ」
エリーザの言葉にしばし顔を見合わせる
だがしばらくすると、リーダー格らしきエルフの男が納得した表情で
「いいだろう。 その条件でアンタ等に従うよ」
「ええ、期待しているわ。 お互い裏切りはなしでいきましょう」
「そうありたいね。 でもあの囚人連中は、後々邪魔にならないか? なんなら利用するだけ利用して、最後は切り捨てるか? アンタ等さえよければ、俺達でアイツ等を始末してもいいぜ」
だがエリーザはこの言葉に対して、肯定も否定もしなかった。
心情的には、肯定したい気分だったが、相手との関係を考えるとすぐ邪魔者は斬り捨てると思われるのも、あまり上手い交渉術ではない。
故にエリーザはあえて結論を出さなかった。
だがそれはある意味「貴方達の自由になさい」とも取ることが出来る。
そうすれば相対的に、金の取り分は増え、邪魔者を始末できる。
「まあ兎に角、お互い手を結ぶ事を決めたんだ。 とりあえず俺達は、この金鉱脈から金を運び出して
男エルフの言葉にエリーザは頷いて、首肯する。
どのみち長居は危険だ。 こういう火事場泥棒のような真似は、さっさと済ませて、さっさと逃げるに限る。
神の遺産とも呼ばれる禁断の実を使ってまで、準備立てして行ったのが、大掛かりな金塊泥棒という点には、いささか恥ずかしく思うが、この際、贅沢はいえない。
どのみち現状の戦力ではやれる事は限られている。
ならばとりあえずは大量の金塊を本国へ送還するだけでも良しとしよう。 そして決意を固めたエリーザは
「ならば早速作業に取り掛かって頂戴。 荒れくれ連中が文句を言い出したら、多少痛めつけても構わないわ」
という言葉にエルフの男はにやりと笑い、「了解、ボス」と答えた。
そして金の精製及び搬出作業が夜通しで行われようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます