第6話  第一章 雪兎と魔人の娘 1

エシポウス大陸最北端 ノルデエンダ


万年雪に閉ざされた不毛の大地。吹雪舞う、極寒の地で雪をかき分けて進む、3人の異様な者達がいた。


一人は体長10メートルもあろうかという一つ目の巨人。


一人は黒いローブを着た骸骨。


一人は大きな角を生やし左腰に剣を携え背に大きな盾を背負っている漆黒の甲冑を着た男。


「モウスグ、ドウクツニ、ツク」一つ目の巨人が二人に声をかける


「やれやれ、やっと着くわい。この寒さは骨身に染みるのぅ。」カチカチと歯を鳴らしながら骸骨の男は冗談を言う


「洞窟に何があるというのだ?。」甲冑の男はあえてアンデットジョークを聞き流した。


「マナドリフトじゃよ。マナドリフトとはマナという魔力の元が異常発生、活性して圧縮され、見えないマナが可視状態になることじゃ。」


「それが発生するとどうなるんだ。」


「可視状態のマナは非常に不安定での、下手に扱うとここら一帯は消滅するのぅ。」


「ダイジョウブ、ナノカ?」


「その為に儂が来ておる。これまで何度もマナドリフトを見て、治めてきたから安心せい。」


「どうやって、治めるのだ?」


「それは着いてからのお楽しみじゃ。というか、見てみんことにはどうしようもないの。ちょっと悪い予感もするの。」


「ドウクツ、ミエテキタ」

2時間ほど歩いただろうか、巨人が指をさすと岩山に大きな穴が開いている。3人は洞窟の入り口になんとか辿り着いたのであった。


「ベアレスは入れそうにないのぅ」巨体を見上げながら骸骨は言った。


「オレ、ココデ、マッテル」


「ブレオン、一緒に来てくれるかのぅ。」


「それが俺の任務だからな。メイザル殿。」


「行くとしようかのぅ」メイザルと呼ばれた骸骨の男は甲冑の男ブレオンと共に洞窟の中に入っていった。


洞窟の中は以外にも温かかった。

内部はヒカリゴケの発光現象でやや薄暗いものの明るく、あちらこちらにある大きな水晶の柱がその光を反射して幻想的な光景が見られる。


二人は奥に進んでいく。

洞窟内部のモンスター達は二人を恐れて寄ってこない。縄張り意識の強い魔獣でさえ二人には近づかないのだ。メイザルは洞窟の奥にある大きな魔力を辿りながら迷う事無く洞窟の奥へ侵入していく。30分ほどで大きく開けた広間に出た。そこは魔力が大きくうねり、渦巻いている直径20メートルの魔力の渦があった。


「これは、ヤバイ」


「こりゃ、まずいの。これ程のマナドリフトは初めて見るわい。」


「メイザル殿、下手につつかない方がよくないか?」


「そうじゃのう、しかしこの渦に飛び込めば肉体が若返るかもしれんのう。飛び込んでみたいのう。」メイザルは阿呆なことを言い出すが


「試しに飛び込んでみれば良い、リッチのお前さんは気持ちよく昇天できるだろうよ。」ブレオンに冷たく言い返される。


「違いないわい。」


「で、どうする?」


「本当ならマナドリフトに接触し魔力を吸い取り儂の魔力へ変換するつもりじゃったが、魔力が大き過ぎて下手に触ろうなら何が起きるかわからん状態になっておる。」


「下手に触ると?」


「ドカンで儂らどころかどれほど吹っ飛ぶのか予想がつかん。昇天どころか跡形なく消え去るじゃろうよ」


「なんだ?」

「む・・」


魔力の渦がいきなり広間全体に広がりだし、大きく膨張・収縮を繰り返しだした。

ブレオンはメイザルの前に立ち盾を構えた。


「ここから離れるか?」


「無駄じゃな、覚悟を決めるかの。」


魔力の渦が拡散し、広間がまぶしい光に包まれる。


「うおっ、まぶし」


広間にあった濃密な魔力の渦は消え去った。その跡には頭に小さな角の付いた雪兎を抱えた少女が現れた。


「ガキが何処からか出てきたぞ。」ブレオンは戸惑っている


「角の付いた雪兎と魔人の娘じゃと・・・」


「ここは何処ですか、あなた達は誰ですか」魔人の娘と言われた兎を少女が目の前の男たちに聞いた。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る