第3話 プロローグ3

 僕の投げたダーツは放物線を描きながらルーレットに突き刺さった。


魔王枠に当たるように投げたつもりだったが・・・・


一瞬、ルーレットが逆回転したような気がした。


あんちゃんはダーツの刺さった場所を確認するためルーレットに近づいた。

ダーツの刺さった場所は魔兎と魔王の間の境界線に突き刺さっていた。


僕もルーレットに駆け寄る。


「うーん、判定が難しいなあ。魔兎か魔王か」


「最弱か最強か。」唸るように呟いた。


「魔兎って最弱なの?」確かにゲームなどでは強い兎のモンスターは少ない。

どこかの海岸にいる兎は闇の王より強いらしいけど。


「そうだよ、魔力とかも持ってるけど、基本的にただの兎だからね。」


「どのくらいの大きさになるの?」


「成長したら2メートルくらいの大きさの兎。カワイイもへったくれもないよ。」


「ド・ン・ビ・キ」あんちゃんは僕を指さしてプギャーした。


僕も2メートルの兎が飛び跳ねるのを想像して恐怖した。


「そこまでの大きさなら普通、兎獣人じゃないの?」


「じゃないよ。一応、獣人はいるけど。から」


「面白くないって、名字じゃなくて本当に兎になっちゃうじゃん。冗談じゃないよ。」


「転生してすぐに兎肉になって食べられるのもなあ。そこまでのでかさになるのはまれだし。」あんちゃんは広げた右手の中指を額に当てながら、考え込む。


「人の話をきけって」あんちゃんに言うが当然聞いてない。


どんな悪だくみをしてるのか想像の埒外なのでものすごく不安だ。


「そうだ、最弱だけど魔王になれるスペックを持った魔兎にすることにしよう。」

ルーレットの周りを歩き出すあんちゃん。


「良いね、うん、良い。でかい兎に率いられる魔王軍。でかい兎にかしずく魔王軍の幹部たち。こりゃ傑作だ。向こうも神々も報復絶叫だね」


「抱腹絶倒の間違いだろ」


だね」今までない邪悪な笑みを浮かべるあんちゃん。まるで聞いちゃいない。


「魔王スペックに至る魔兎。可能性の魔獣だね。ついでに角もつけてあげるよ。ウサコーンだね」うんうん、うなずきながら僕に言った。


「それを言うならアルミラージだろ。何で知ってるんだよ。」すばやくツッコミを入れる。


「君の生前の知識が思考と同じく駄々洩れてるんだよね。そこから面白そうな知識を拾ってる。だからのさ」


「頑張って、レベル上げて進化してね。チートも授けるしこれで安心して異世界転生できるよ。」うんうんとうなづく。何かを思い出したようにあんちゃんは


「君、ガンダムシリーズ好きだよね。あれをチートの参考にするから。お楽しみに」


「すごーく、不安だ。」チートにしてもスペックにしても何されるのか全く予想できない。


「では、転生の儀を始めるよ。」といった瞬間、突然に僕の足元に穴が開いた。


「勝利の栄光を君に!!」あんちゃんが敬礼しながらそう言った。


「死亡フラグじゃ、ぼけー」僕は反響する絶叫と共に穴の中に落ちていった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る