【エッセイ】小説のネタ出しが捗る『4Bの法則』

ハルカ

「のんびり」すればネタが降ってくる

 昔、どこかの作家が言ってた。

 小説のネタを出そうと思ったときに、一番やっちゃいけないことは「真っ白な原稿用紙に向かうこと」だって。

 今の時代なら「真っ白なエディタ」といったところか。

 たしかに真っ白な画面を眺めていると頭も真っ白になるもんね。わかる。


 小説のネタを出すならもっと良い方法がある。

 それは【3B】。鉛筆の芯の硬さではない。


 ・Bath(風呂)

 ・Bus(バス)

 ・Bed(ベッド)


 のことで、【アイディアが出やすい場所】だそうだ。

 人によっては「タクシー」だったり「電車」だったりする人もいるだろう。

 ようするに【ぼんやり】【リラックス】しているような状態だ。

(ちなみに、「Bar(バー)」を足した【4B】なんてのもあるらしい。)


 私も、机やパソコンの前で考えていたときは何も浮かばなかったのに、風呂に浸かった途端「はじめまして。ネタです」とやってくる場合がちょくちょくある。

 場合によっては「はじめまして。ネタです「はじめまして。ネ「はじめまし「はじ「は「は「は「は「h」となる場合もある。


 最初はこちらも「どうぞどうぞ」と迎え入れるが、次第に「どうぞどう……ちょっと待てーい」となり、慌てて風呂から飛び出してスマホをひっつかんで戻り、勢いよくメモをする羽目になることも、たまにある。


 創作をしない人からしたら「風呂のあとでゆっくりメモすればいいんじゃない?」と不思議に思うかもしれないが、甘い。


「めっちゃ面白いネタを思いついた!」

 と大喜びしても、風呂を出たあとにうっかりメモを忘れると、翌日にはもう覚えていない。

「あのネタ、なんだっけ?」

 哀しいことに創作あるあるである。

 人間は忘れる生き物である。永久とわにグッバイ、傑作ネタ。


 こうしてネタとの出会いと別れを繰り返しながら、物書きは学び、成長し、慎重になり、やたらメモを取るようになるのだ。

 メモは単なる「記録」だけじゃなく「脳のメモリを空ける」作業だと思う。

 頭がネタでいっぱいになったら、一度それを吐き出してやったほうがいい。

 脳内のネタを書き出した途端に新しいネタが「はじめまして。新しいネタです」とやってくるのもよくある話。


 ところで私は「運転中」「散歩中」「料理中」にもネタが湧きやすい。

 運転中は困るが、散歩中や料理中ならスマホでメモを取れる。

 最近では音声メモを使うことも多い。聞き取りミスは少なくないが、あとで私がわかればいいのだ。


 そういえば、音声メモで「4B」と入力しようとしたら「のんびり」と変換されたことがあった。

 あながち間違ってない。ネタはのんびりしているときに降ってくる。

 だから、もし小説のネタ出しに困ったら「ひとまず風呂に浸かれ!!」と声を大にして伝えたい。

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