第9話 死なないダンジョンの造り方

 朝になったが、ダンジョンの中で生活しているせいか、ダンジョンの外で生活していた頃の感覚が分からなくなりそうだ。時計はあるし外の時間に合わせてダンジョン内の明るさを変えるように設定しているが、他の人に会わないし市場にも行かないからな。


「さて、今日もダンジョン造り頑張りますか」


 今日は昨日の続きでベアトリスとククルと訓練エリアに来ている。死なないダンジョンの説明をしないといけない。


「それじゃあ昨日言った死なないダンジョンの説明をするぞ」


「あぁ。どういう事か説明してくれ」

「説明してもらう」


「うむ。と言っても理屈はそんなに難しくないんだよな。ただ俺が時空間魔法を高レベルで使えるから出来る事ってだけで、それとダンジョンのシステムを使えば出来るはずだ」


「それでどうするんだ?」

「勿体ぶらないで」


2人が早く話せと言ってくる。昨日から待たせているから仕方ないが。


「それはまず生命感知のアイテム使ってダンジョン内に居る人を感知するんだ。そして生命反応が無くなりそうな者を感知したら、ダンジョンに組み込んだ【リワインド】っていう時空間魔法でそいつの時間を少し巻き戻して、ダンジョンのシステムを使って強制的に【蘇生・回復エリア】に転移させるんだ。時間を巻き戻すのは即死もあるからだな。ただそんなに都合が良い魔法じゃなくて巻き戻すのは最大で10秒が限界だ」


「「…………」」


―――2人が口を開けて絶句している。面白い顔だな。


「そんなこと本当に出来るのか?」


 ベアトリスが信じられないという顔で聞いてくる。ククルの方は、実際に可能か考えこんでいるようだ。


「ダンジョンの操作盤を調べてたら何かいろいろ出来るみたいでなぁ、回復エリアも造れるみたいなんだよ。最初はそこまでするつもりは無かったんだけど、死ぬ可能性が低いならそっちの方が良いと思ってな。魔法も術式をダンジョンに組み込めそうなんだよ」


「可能ならとんでもない事だぞ。安全に訓練出来るなんて初心者にはありがたい環境だからな。だが死なない事に慣れてしまうと逆に危険だからな、そこは気を付けないといけないだろう」


「そうだな。死なないからと高をくくると痛い目に遭うかもしれないし、暴力をふりかざすやからが現れるかもしれないからな」


「あぁ、出来たら兵士かギルドに治安に気を付けてもらえるように頼んだ方が良いかもしれないな。いや、兵士を使うとなると政治的な思惑が入るかもしれないから中立のギルドが良いか」


 ふむ。ベアトリスの言う通り、ギルドに治安維持に協力してもらうのは良い案だな。ダンジョン内を監視出来るシステムを造るのも良いかもしれない。


「回復エリアは1階に造っておけば良いだろ。取りあえず試しに造ってみて、ちゃんと機能するか確かめよう」


―――俺はダンジョンコアに生命感知のアイテムを吸収させて、コア自体に生命感知能力を持たせる。次に操作盤でダンジョンに時空間魔法【リワインド】の術式と転移のシステムを組み合わせる。これで救済システムが出来上がったはずだ。


「これで出来たはずだ。試しに死んでみるのは嫌だから、申し訳ないが動物実験になるな。大丈夫、ちゃんと機能していれば死なないから」


 俺は昨日用意しておいた、まだ生きている状態の鳥を持ってきた。(食用に飼育されている飛べない鳥で、後で食材エリアに放って繁殖はんしょくさせようと思っている)それをめると途中で鳥が転移魔法で消えた。


「おっ成功か?回復エリアに行ってみよう!」


 俺達は鳥がどうなったか確かめようと回復エリアに移動すると、そこにさっきの鳥が元気そうに歩いていた。


「よしっ!成功だな。これでこのダンジョンでは、まぁ絶対とはまだ言えないが死ぬリスクはかなり低いだろう」


「すごいな……本当に死なないのか?ギルドに言っても信じないだろうな」


―――確かに信じないだろうな死なないダンジョンなんて夢のようなものだ。


「マギって時間を巻き戻す事が出来るの?初耳」


「まぁな。今まで使う機会が無かったんだよ」


 使う機会が無かったのは本当だ。もしバレた時は時間を巻き戻そうとは思っていたが、バレなかったからね…………。


「あっ!でもこれじゃあ虫とか動物も殺せないから困るなぁ。人間限定に設定しないと」


 虫を駆除する必要も出るかもしれないし、食材として動物を解体したりするだろうからな。あっそうだ、1階に飯屋も作ろう。


「これで訓練エリアはだいたい形になったかな?1階をちゃんと造ったら一度ギルドに話しとくか。アルマスとマリアンヌにも先に話しておいた方がいいかな。マリアンヌの口から王様の耳にも入るだろうし」


「1階か……冒険者ギルドの区画と商業ギルドの区画で分けておくぐらいしか出来ないんじゃないか?」


 確かに今俺達が出来る事って無いかも。後でやり直す事になったら意味無いし、実際に来てもらった方が良いな。


「それじゃあ、どんな施設があった方がいいか意見はあるか?俺は飯屋はあった方が良いと思うんだよな」


「なるほど……確かにあった方が便利だな。毎日作るのは面倒だし、早めに欲しいとこだな。あと、ここはダンジョンだから鍛冶屋とか道具屋は必要だと思うぞ」


 まぁダンジョンだからな。鍛冶屋と道具屋は必要だよな。っていうか生活に必要なのは全部作るか?ここに住んでるんだし。


「本屋は作るべき。街まで買いに行くのはめんどう」


―――ククルはものこのダンジョンから外に出ないんじゃないだろうか。


「本屋もいいな。暇つぶしになるから娯楽施設も作りたいなぁ(本当ならも欲しいが、俺の口からは言えないから商業ギルドに期待するしかない)俺はあまり飲まないが酒が飲める場所も必要だよな」


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最上階 俺達の家

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6階 食材エリア 

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5階 ドロップ目的エリア

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4階 訓練エリア(洞窟)

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3階 訓練エリア(森) 

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2階 訓練エリア(草原)

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1階 各ギルド 飯屋、酒場 娯楽施設(本屋)

   鍛冶屋・道具屋 服等の生活必需品

   回復エリア

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地下ダンジョン(予定)

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「こうなってくると完全に町だな。一から町つくるってなると時間がかかるなぁ。ダンジョンのシステムで家を建てる事って出来ねぇかなぁ。小さいのは出来るんだけどなぁ」


 操作盤で家を建てれないか調べてみると、設定すれば出来ないこともないらしい。

なんでも、ダンジョンコアに触れながら作りたい物をイメージすれば、作れる物を増やせるらしい。だけど、ちゃんとイメージしないと思ったのと違う物になりかねないから注意しないといけないようだ。


「……出来るみたいだな。マジかよ、高い金出して家買う必要無かったじゃん。ちゃんと調べねぇとダメだなぁ」


―――ものすごくショックだ…………。今度からは気を付けよう。マジで気を付けよう。


「それじゃあ明日ギルドに話しに行くか?」


「いいんじゃないか?これ以上はギルドと一緒にやっていった方が良いだろう」


方針だけ伝えて詳しくはギルドに決めてもらう方が良いという事になった。


「アルマス達にも言っておかないとな、手紙でいいかな?」


「そうだな城に居るから直接行くのは面倒だ。マリアンヌに会うには手続きが必要だろうからな」


お姫様だからな。アルマスは騎士団に入るって言ってたっけ?


―――そういやあの2人ってどうなったんだろうか?結婚してたりしてな。


「私は留守番してるから。ここは私が守るから安心して」


―――ククルは自宅警備員に就職したようだ。まぁいいけど。


「そういえばダンジョンの名前はおもいついたのか?」


―――ダンジョンの名前か。


「あぁ俺はセンスが無いらしいからあまりいいのが思いつかなくてな、難しく考えないでそのまま【不死城ふしじょう】にしようと思う」


「いいんじゃないか?わかりやすくて」

「不死城のダンジョンでいいと思う」


2人とも納得してくれたようで助かる。名前を付けるのって難しいんだよ。


「それじゃあ今日はここまでにして、明日シーテンに向かうか?」


「そうだなっていうかまだ昼だけどな……」と、ベアトリスがまたしても呆れた感じで言ってくる。


「俺は基本的に怠け者だからしかたないんだ」


「私もしかたない」


俺とククルは怠け者だからしょうがないんだ!


















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