第2話 国に帰ってきました


 俺達は、結構長い帰り道を来たわけだけどこれといって何かトラブルに見舞われる事もなく無事に王国に着くことが出来た。

 

 少し離れた所から城壁が見えた時は過酷な旅も終わりだと少し涙が出た。魔王が討伐されたことが知れ渡っているわけでもないので、特にお出迎えとか無くいつもと変わったところが無いので少し寂しいような気もする。


「よし!それじゃあ王様に報告しに行こう!魔王の脅威は去った事を国中の人達に知らせないといけないからね!」


 アルマスがそう言って城に向かって行く。


「そうですわね。早く父に報告しましょう」


「私も行かなくてはダメか?少し面倒なのだが…………」


 マリアンヌが賛同し、ベアトリスが正直に行きたくなさそうに言っている。俺も行きたくない。


「私も面倒だけど、こういうのはちゃんとやった方が結果的に面倒事が少なく済むと思うから我慢した方がいいかも」


 ククルが面倒でも行った方が良いかもとベアトリスにアドバイスしている。まぁ確かに面倒事はさっさと済ませて休みたい。


 きっと、魔王討伐成功の国を挙げての祭りがあるだろうからな…………。民衆の前で演説とかさせられるんだろうか?それは断固拒否しよう。


 そんなこんなで王様の住む城に着いた。城自体に名前がついているわけでは無いので、みんなからは【アクア城】と呼ばれている。


門番がこちらに気づき声をかけてきた。


「姫様!ご無事でしたか!こちらにおられるということは何かありましたか?」


門番がここにいる事情を聞いてくる。


「はい。ご心配下さりありがとうございます。魔王の討伐に成功したためお父様に報告しにきました。一緒に居るのは勇者様と仲間達です」


「なんと!!本当ですか!?直ぐに門を開けます!!」


門番が急いで門を開けて通してくれた。


「それでは行きましょう」


 マリアンヌが先行して城の中を進んで行く。謁見えっけんするための部屋の前に着き中に入ると、広くきらびやかな部屋の奥に王様が立派な椅子に座っていた。


 王様はふくよかな体形で鼻の下にひげを生やした優しそうな顔した人で、見た目どうり優しい性格をした人だ。子供の頃にマジックアイテムの件で会った事がある。


 俺達は王様の前でひざまずき、声をかけられるのを待った。


「顔を上げてよいぞ。それでマリアンヌ、魔王の討伐に成功したのは本当か?」


王様の問い掛けにマリアンヌが答える。


「はい。こちらに居る勇者であるアルマス。魔法使いであるククル。剣士のベアトリス。時空間魔法を使えるマギと共に魔王を討伐する事に成功いたしました」


マリアンヌが俺達の事を紹介しながら答えた。


…………俺の事をただの荷物持ちとして紹介しなかったのは感謝します。


「そうか!やっと魔王の脅威から解放されるのか!よくぞやってくれた、この事は国を挙げて祝おうぞ。褒美も与えるが、今は疲れているだろうからまずは休まれよ」


 王様がこちらが疲れているだろうと気を使って休むように言ってくれた。良い人である。


「そうですわね。そういうのは後日ゆっくりやりましょう。欲しいものといってもお金で良いらしいのですぐに済みますし」


 褒美の件は事前にマリアンヌから何が良いか聞かれていたため、みんな無難にお金で良いと伝えてある。(お金はギリと言いパンが1つ100ギリで売られている)


「うむ。それではこちらは祭りの準備に取り掛かるとするか。おぬしらにはパレードに参加してもらいたい。馬車から手を振るくらいで良いから頼むぞ!」


 パレードに参加しなくてはいけないらしい。断固拒否するとは思ったが実際にいやだと言えないのでやるしかない。手を振るぐらいなら良いか。


 それから俺達は城で休んでよいと言われたが落ち着かないので王都の宿に泊まることにした。


―――それから3日後、魔王討伐記念祭りが開催された。


 国中から人が集まり、人族のヒューマンと妖精族のエルフとドワーフそれとそのハーフ達といろいろな種族の人達が仲良く祭りを楽しんでいる。


 そして俺達は勇者パーティーとして屋根の無い馬車に乗り、大勢の民衆が集まっている大通りでパレードに参加している。不純な理由で勇者パーティーに寄生していたため非常に居心地が悪い。


―――もちろん今は大切な仲間だと思っているぞ。


 アルマスとマリアンヌは民衆からの黄色い歓声に笑顔で手を振り、美男美女で絵になっているが、俺とククルは笑顔が引きつっているし、ベアトリスに関してはムスッとしてるし手も振っていない、愛想の良い姿が想像出来ないけど。



 ((( 早く終わってくれ!! ))) 俺達3人の思っていたことは一緒だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 日が沈む頃にようやく解放された俺達は宿の部屋で休んでいた。パレードが終わった後も王様や貴族の人達に挨拶したり全員に縁談の話がきたり(みんな断ったがアルマスとマリアンヌの2人はお互い意識している感じがしているからもしかすると結婚するかもと思ってる)と結構な時間を拘束されて非常に疲れた。


「やっと解放されたな。かなり疲れたよ」


勇者でも流石に疲れたらしい。


わたくしはこういうのは訓練されているのでまだマシといったところでしょうか。進んでやりたいとは思いませんが……」


まぁお姫様仕事ってこういうのばっかなんだろうな。


「「……………………」」


ククルとベアトリスは何も言わずにテーブルに突っ伏している。


「…………これで僕達の旅も終わったんだなって思うと何か感慨深かんがいぶかいものがあるね」


 アルマスがしんみりした感じで言ってきた。確かにこれで終わりと思うと俺でも心に来るものがある。


「2年程の旅でしたが、大変なこともたくさんあって…もっと長かったように感じますね」


マリアンヌが魔王を倒すまでの過酷さを思い出している。お前の言ってるこはわかる、とても2年とは思えないくらい濃密な時間だった。


「普通の道とかならともかくダンジョンの中だとマギが居なかったらもっと大変だったろうからもっと時間が掛かっただろうな」


 ベアトリスが俺を褒めてくれるのが心苦しい。確かに俺の魔法は便利だがそれでも国が長い間対処に手こずったてた事を2年でやってのけたお前達は凄すぎるよ。


 ちなみに俺達の歳は、俺が20歳でアルマスが17歳、マリアンヌが17歳、ベアトリスが18歳、ククルが16歳である。かなり若い。

         

「でも、魔王を倒したから大変なことはしばらくは起きないと思う」


 ククルがしばらく起きないというのは、魔物が生まれるのはよどんだ魔力によるものだが、これが異常に溜まった事が原因で生まれるのが魔王と言われていて滅多に起きる事では無いからだ。


 最初に魔王が現れたのはよくわかっていないが、伝承では以前に魔王が生まれたのは300年前で、神様が魔王に対処する為に特別に聖剣召喚という魔法を創り与えたと言われている。


「うん。だから今日でこのパーティーを解散しようと思う」


 アルマスが解散すると言い俺達はそれに賛同し、最後にちょっとした宴を開いた。


 このパーティーはアルマスが勇者に選ばれた事が始まりで、そこに浄化と蘇生の魔法が使える聖女のマリアンヌが同行することになり、王国の魔法部隊の隊長の娘であるククルと騎士団長の娘で冒険者をしていたベアトリスが加わり、最後に俺がよこしまな気持ちで入る事になる。(本来ならここで自分の本当の目的と今の気持ちを伝えて謝るべきなのだが、俺はそんな良い子ちゃんじゃないので墓場まで持っていきます)


 大変な事もたくさんあった旅だったが、確実に俺達にとって大切な経験であり思い出となった。人間としても少しだけ成長したと思う。


 そして俺達は別れを惜しむように朝まで飲み明かして、俺達の旅は一先ひとまずの終わりを迎えた。




―――そして新しい朝が来る。





























 
































  


















 

 

 





 







































 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る