第4話 昔の仲間の墓参り
聖アリア大聖堂の一角に、王家に仕えた使用人達の墓地がある。代々仕えてきた者、家族のいない者が葬られる墓地だ。ジェームズは、たった一人でマシューの葬儀に参列し、大聖堂を後にした。アレキサンダーとロバートは、身の安全を考慮すると参加できない。ジェームズは庭師だから、代わりに花を手向けてくれと頼まれた。
ジェームズは、それ以来、年に一度、マシューの命日には仕方がないから来てやっている。
「おい、マシュー、仕方ないから今年も来てやったぞ。ありがたく思え。悪いが、先に逝ったお前の顔など当分みたくないから、そっちに行くのはずっと先だ」
挨拶代わりの悪態にも、当然返事はない。
「なぁ、マシュー。先々代様と先代様に、報告だ。当代様にもいい子ができた」
神様は、きちんとジェームズの祈りを聞き届けて下さったのだ。
「随分と小さい嬢ちゃんだが、まぁ、先が楽しみだ。ちゃんとお二人の子供の顔も、お前に代わってしっかり見届けてやるから、お前はそっちで悔しがってろ」
マシューからの返事なぞないが、マシューが悔しがっている様子が脳裏に浮かんだ。
「いいか、マシュー、先々代様と先代様に、ちゃんとお前から言っといてくれ」
ティタイトとの戦争で亡くなった先々代の長ロバート様、王領で亡くなった先代の長アリア様の墓は聖アリア大聖堂にはない。
「俺がそっちに行ったときに、伝言が伝わってなかったら、お前を絞めてやるから覚えておけ」
ジェームズは口にしてから気づいた。死人が死人を絞めたところで、意味がない。自分の悪態の無意味さに苦笑しながら、ジェームズは墓地を離れた。
<マシューのチキンスープ 完> (次章に続きます)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます