マシュのチキンスープ
序章
ライティーザ王国の王太子宮の厨房では、チキンスープのことを、「マシューのチキンスープ」と呼ぶ。丸ごとの鶏を使った基本のスープだ。そのスープに様々な野菜を入れて煮込んで料理になる。いろいろな料理の元になる。珍しいスープではない。だが、王太子宮では「マシューのチキンスープ」と必ず人の名をいれて呼ぶ。
「ロバート。どうしてこのスープは、マシューのチキンスープなの」
ある日、味見用の小さな器にいれてもらったスープを、冷ましながら飲むローズの言葉にロバートは微笑んだ。
「以前、マシューという料理人がいたのですよ」
ローズの言葉にロバートは、王太子宮に来て間もなく、まだ馴染めなかった頃の話を始めた。
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