20 話をしよう1
さすがに緊張する。何かしゃべらないと気まずい。
「あの、クリフォード様」
千佐が口火を切った。
「クリフォード様は男性がお好きですか」
予想外すぎる発言に脱力する。
「いや、女の子が好きだよ」
「幼年のおなごが好きと」
「違う、そうじゃない。同年代の女性が好きです」
余計な誤解を受けていそうで怖い。なぜそんな思考回路に至ったのだろうか、問い質したい。
「そんな特殊な趣味はないよ」
「どっちもそう珍しいものではないと思いますが」
「マジで……?」
お国柄の違いか、それとも自分が知らないだけなのか、クリフォードには判断つかない。
「なんでそう思ったの?」
「だって、クリフ様清六とよくお話になるから」
その伏し目がちで視線の合わない感じが、しおらしげにもふてくされてるようにも見えた。いじらしく思えて、ちょっかいを出したくなる。
「む!?」
つい、頬を指で突いてしまった。
「あ、ごめん……年が近いからしゃべりやすいだけだよ」
「クリフ様はおいくつですか?」
「24だよ。千佐は」
「22です」
思ってたよりも、年齢が上だった。
クリフォードには千佐が18歳位に見えていた。こちらの人は若く見える。清六も20代前半に見えていたが、26だと言う。
「クリフ様は20歳位に見えてました」
「そう……俺たちも、歳が近いしもっと話をしよう」
自身も童顔だと告げられたことは流して、提案する。
千佐との距離感をなくすためにも、必要なことだ。千佐からは遠慮のようなものを感じていた。
「クリフ様は、何もご不満はないのですか?」
「不満?」
「お国では、きっともっといい暮らしをされてたのでしょう?
なのに、こちらに来てからは食事は粗食ばかり、お酒もこちらのものはお口に合わないようですし、今夜のお宿も真っ当なものは用意できてません。
伽のお相手を見繕えばいいんでしょうけど、好みもわかりませんし、私もそういう喜ばせる術を知りませんし、いったい何を捧げればいいのかわかりません!」
「落ち着いて、千佐!」
言い募る内に興奮してきたのか、どんどん大声になってしまっている。そんな千佐を宥めるのに、ついクリフォードも大声になる。
夜にこんな大声はさすがに周囲の迷惑になる。しーっと口許に指を立てて、静かにするよう促す。
「えーと、食事は結構口に合ってるから、大丈夫。酒は元々強くない。宿はこういう場合は仕方ないと思う。……俺の国では出会ったばかりの男女がいきなりそういうことをすることはまず無い。から、気にしなくていい」
ひとつひとつ、答えていく。
「俺は、こちらには魔物退治に来ている。そして、千佐は俺と同じ目的を持った同士だ。敬おうなんて思わなくていい。お互い対等でいよう」
千佐の目を見て、真摯に語りかける。どのくらい伝わったかはわからないが、千佐の険しくなっていた眉が和らいで下がっている。
クリフォードは千佐に手を差し出した。
「これから、よろしく。千佐」
千佐がおずおずと差し出された手を握り返す。握手をしながら、なんとかやっていけそうだとクリフォードは安堵した。
「仏教における天界のひとつ
「ん?」
唐突な話についていけない。
「色欲は手を握ることで満たされるそうで」
「ええ、何それ」
もちろん、そんな意味で握手したわけではない。
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