二章
15 これから一揆の予定です1
早川領をくまなく見て回ったが、魔物は見つからなかった。
早川領に出る魔物は、他所の領から流れてきたものだろうと考えられる。
そうなると、どこか他所へ探しに行くかと言う話になる。
「魔物を倒しきるまで帰らない所存です!」
「そんなことは許さん!」
血気盛んな
さすがに怒られるだろうな、とクリフォードは思っていた。
「帰らない等と言うなら、そもそも家から一歩も出さんぞ!」
叔父の言葉に、千佐はむすっと押し黙る。出会ってほんの数日ではあるが、クリフォードはこの二人の性格が何となくわかってきていた。
「お前は本当に余計なところばかり
「私は兄に似ていません!」
クリフォードも早く帰らねばとの思いから決して落ち着いているわけではないのだが、千佐がそれ以上に焦っているので、横にいると自然とそう見えてしまう。
千佐は早く兄を帰さねばと焦るほどには慕っているのだが、似ていると言われるとなぜか不名誉そうにして腹を立てる。
「まあ、落ち着きなさい」
穏やかに二人を宥めるのは、大叔父である
「お前たちが留守にしている間に、こちらでも化け物の消息は探っておくから確認しに帰ってきなさい。今は領内に化け物はいないが、また流れてくるとも限らんし」
「わかりました」
説明されて、千佐はすぐに納得する。話が丸く収まって、内心ほっと息をつく。
「
「承知しました」
忠克は側に控えていた下男、清六に声をかける。初日にクリフォードの着付けをしてくれて以来、何かと世話をしてくれている下男で、すっかり顔馴染みである。
「二人ともに言っておくが、清六を伴わずに勝手に歩くことは絶対にやめなさい。顔がいいとそれだけで悪い奴は寄ってくる。これは男でも女でも関係ないことだから、なるべく三人で行動しなさい。清六と離れないといけないときは、無闇に動かずに二人でいなさい。絶対に一人になってはいけない」
魔物退治に関しては何の心配もされてないのに、ただ街道を行くことを心配されている。どれだけ治安が悪いのだろうかと、不安になる。
「特に千佐に言ってるんだぞ。わかってるのか?」
通正が念を押してくる。その念押しに千佐はまた少し不機嫌そうにしているが、黙って聞いている。
「不満そうにしたとこで、お前は世知に長けているわけでもないのだから、ここは言うことを聞いておきなさい」
異国出身のクリフォード以上に気を付けろと言われる辺り、よっぽど女性が危ない目に遭いやすいのだろうか。女性の一人歩きが難しいのは、どこの世界も変わらないと思っていたが、想像以上かもしれないと気を引き締める。
「千佐、クリフォード殿は腕は立つようだが、こちらに慣れているわけではない。彼の背中を守れるよう、必ず側を離れぬようについていきなさい」
忠克が諭すように言うと、千佐の顔が上向き表情がきりっとなる。
「はい!絶対お側を離れません!」
ものは言いようだな、とクリフォードと通正は思った。
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