第47話 エピローグ

「副所長、他に話すことはありませんか?」



 マーティン様の屋敷に向かう馬車の中。向かいに座って、外を眺めている副所長に聞いてみる。



「話すこと……?」 


「はい。副所長は、私が婚約破棄をしたことを知っていましたよね?」



 私がジロリとした目で見ると、副所長は肩をピクっと動かした。



 副所長の反応に、全部知っていること確信する。



「副所長だけ、私の事を知っているのは不公平だと思うんです」



 私の言葉に副所長は、「そうだな」と組んでいた脚を組みかえる。


 

 何を言われるのかとドキドキしていると、副所長は考えた末、口を開いた。



「僕が先代王の息子だということは知っているだろ?父親がいれば、母親がいるんだが……僕の母親は、アマンダ・アクアダム。先代の魔塔所長だ」



 副所長の告白に、私は目を見開く。


 驚いて何も言えないでいると、マーティン様の屋敷に到着したのか、馬車が止まる。



「シャーロット!待ってくれ!」



 副所長の静止を無視して、馬車から飛び出す。 



「副所長は酷いです!私がアクアダムス様のファンだと知っているのに!!」



 追ってくる副所長に、足を止めて振り返りながら言う。


 涙目で言う私を、副所長は優しい笑顔を浮かべている。



 そんな副所長を、キッと涙目で睨む。



「すまない。言えない事情があったんだ」


「……」


 

 困ったように笑う副所長に、何も言えない。



 副所長の出生の秘密は、国家機密だから言えないのは理解できる。

 でも、それでも……。



「隠していることは、もうないから許してくれ。それに、母上にはこれから沢山会うことになるだろうから」


「アクアダムス様に、会う……?」



 パッと顔を上げて聞くと、副所長は不思議そうな顔をする。



「将来、義理の母になるだろう?」



 副所長の言葉に、私はピタッと身体の動きを止める。


 ぎりの、はは……?

 アクアダムス様が私の義理の母になる?それって、つまり、私が副所長と結婚をするの??



「結婚、するん……ですか?」



 副所長は、さも当たり前かのように、「しないのか?」と首を傾げた。



 驚く私を置いて、副所長は屋敷へと足を進める。



 呆然と立っていた私は、副所長の背中を追いかける。副所長の前に立って、目が合うと、副所長の襟を掴み、グッと引き寄せる。



 目を見開く副所長に顔を近づけると、私は頬にキスをした。



 いつも、揶揄われてばかりいるんだもの。これぐらい許されるはずだわ。

 


 ほんの数秒なのに、永遠に感じながら、目を開けて顔を離す。副所長は驚いた顔で私を見ている。



 そんな副所長に私は、「結婚式の予行練習です」と笑って言った。





 沢山の人に祝福され、公爵になったジェレミーと結婚するのは、そう遠くない未来の話。


ーー婚約破棄したシャーロットが幸せになる話。


 

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婚約者の浮気をゴシップ誌で知った私のその後 桃瀬さら @li-lac

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