6 天空大地、墜落す
――ドガガガガガガガガーンッ
俺たちが生活してきた天空大地が、この星の地面へ落下した。
その光景を、俺とミーシャは空の上から眺める。
俺たちは落下する天空大地から脱出するために、ウイングアーマーという空を飛ぶことができるアーマーを着て、落下前の天空大地から脱出することができた。
ウイングアーマーは、低高度であれば空を自由に飛ぶことができる。
高度1000メートル以上の高さでは使用できないため、今までは天空大地からの脱出方法として使うことができずにいた。
だが、天空大地の高度が下がったことで、アーマーを使って脱出できたわけだ。
「ああーっ、私の王国がー!」
「せめて家って言ってくれ。人口2人だぞ」
俺とミーシャが住んでいた
墜落の衝撃で、天空大地が3つに割れて崩れ落ち、上にあった建物が崩壊に巻き込まれていく。
俺にとっては200年近く、ミーシャも100年以上過ごしてきた我が家の、最後の光景だ。
取り乱して泣き叫ぶミーシャほどではないが、俺もこの光景には悲しくなる。
だが、いつまでもしょんぼりしていられない。
脱出前に当座の食料や飲料水は確保したものの、これからの生活を考えなければならない。
幸い天空大地が墜落したのは、森の中だった。
海の上で干からびるまで漂流、という事態は避けられた。
人口密集地に落ちて、大虐殺を引き起こすこともなかった。
と言っても、脱出前に見た範囲は、視界一杯に広がる巨大な森。
近くに人の集落は見つからず、森以外に、何も見つけられなかった。
「とりあえず落下した物の中から、使えそうなものがないか探そう」
これからのことを考えていかなければならないが、まずは墜落した天空大地に、使える物が残っていないかと、残骸を漁りに行くことにした。
墜落した天空大地の残骸を漁った結果、案外使える物が残っていた。
ということで、俺たちの手元に残ったのは以下の物。
まず、墜落前に俺とミーシャは当座の食料・飲料水を確保して脱出したが、これ以外にも天空ロボが短時間であれば空を飛べるので、墜落前に脱出させておいた。
そんな訳で、無事な天空ロボが12体。
それと俺がこの世界に転生後、暇を持て余して作った思考能力を持つ多脚戦車が6台ある。
攻殻機動○をしてみたかっただけだ。
多脚戦車の名前はシンクというが、足にブースターを取り付けると高度100メートルからの落下には耐えられる設計になっている。
天空大地にいた時は試し用がなかったので、計算上の仕様に過ぎないが、これも墜落前に脱出させておいた。
「みんなー、元気かーい?」
「「「元気元気―っ」」」
シンクたちは無事に地面に着地し、元気な声を上げている。
そんな訳で、思考多脚戦車が6台。
さらに墜落した天空大地の残骸を漁った結果、研究設備の一部が生き残っていた。
そこに置いていた、シュワルツ型戦闘ロボ10体(これも俺が暇で作ったもの)が無事だったので、これも確保だ。
ちなみにシュワルツ型戦闘ロボは、見た目は完全に人間で、厳つい大男の姿をしている。
外見が同じだとつまらないので、顔の造形は1体1体変えている。
見た目は大男だが、内部は金属のボディーで作られていて、銃弾を撃ち込まれても壊れない強度がある。
内部構造を強固に作っておいたおかげで、落下の衝撃に耐えたようだ。
「暑苦しい。どうせ作るなら、可愛い女の子にしなさいよ」
なお、シュワルツ型戦闘ロボを作った際、ミーシャから苦情を言われたので、女型シュワルツロボ改め、メイドロボ3体を制作した。
これも無事だった。
俺としては戦闘メイドロボにしたかったのだが、ミーシャに反対されたので、戦闘能力はない……ことになっている。
「可愛い女の子たちに戦闘をやらせようなんて、兄さんは何を考えているの?
自分は非力なくせして、可愛い女の子を戦わせるなんて最低のクズね。
男なら、女の子を守るための肉壁になって死んでしまいなさい」
なんて、散々な罵声を浴びせられた。
戦闘能力はないものの、彼女たちの内部構造もシュワルツ型戦闘ロボ並みに高い。
もちろん、ミーシャから「可愛い女の子ロボが、壊れたらダメでしょう」という、指摘をされたせいだ。
戦闘能力がないことになっているが、シュワルツ型戦闘ロボとタイマン張れるだけの能力があるんだよなー。
このことがミーシャにバレたら締め上げられるので、言ったことないけど。
ロボット組としては、これ以外にもNo13と名付けた、スナイパー能力に長けたロボと、それを補佐する女性ロボのレディー
さらに料理長ロボも無事だった。
料理長ロボは、天空大地で生活する俺たちの為に、おいしい料理を作ってくれるいい奴だ。
まあ、俺の趣味が高じて作成したロボなので、料理が万能なだけでなく、戦闘能力も高い。
テロリストに占拠されて沈黙した海洋戦艦を、たった一人で取り返せるくらいには強いと思う。
あくまでも、俺の希望だけど。
そんな訳で、シュワルツ型戦闘ロボ10体と、メイドロボ3体、No13、レディー6、料理長ロボの、合計16体のロボが無事だった。
このほかにも、天空大地の制御室が半壊していたが、残り半分の設備が無事。
天空大地の要である、
と言っても、どちらも今の俺たちに運び出す手段がない。
単純にデカくて重たすぎるせいで、動かすことができないのだ。
「兄さん、天空大地の心臓部が無傷だったのです。
天空大地を修復して、再び”私の王国”を空に戻しましょう」
俺にはミーシャが、ロムスカーナ大佐の怨霊とダブって見えてしまう。
異世界転生しているので、この考えは間違ってないだろうが、兄である俺としては凄く複雑な気分になってしまう。
ただ、俺にとっても天空大地は故郷だ。
「そうだな、また空に浮かばせたいな。
ただしコア部分が無事でも、それ以外が壊滅しているけどな」
「兄さんが直せば問題ないじゃないですか」
「無茶言え。こんなバカでかい物、俺1人で直しきれるか!」
ミーシャには、天空大地の広さを考えてもらいたい。
ただ浮かばせるだけでも大変なのに、さらに空中でバランスをとるためには、プロペラ群全ての修復が必要になる。
そのプロペラ群は、落下の際にほぼ全てが破壊されている。
さらに、天空大地自体が3つに割れているので、もうどこから手を付ければいいか分からない壊れ方をしている。
直すくらいなら、新しく作り直した方が、ましかもしれない。
「安心してください。私たち黒のハイエルフは数千年生きられるんです。
兄さんが血反吐を吐きながら直し続ければ、寿命で死ぬ前に元に戻せますよ」
「ミーシャ、笑いながら言わないでくれ。
寿命で死ぬ前に、ブラック労働で俺が死ぬ」
「男なんだから、私の役に立ってから死んでください」
ヒエェー、妹が笑顔を浮かべて、「ブラック労働で死ね」と宣ってくる。
怖すぎる。
「た、助けてくれー、シュワルツ―、シンク―!」
妹の妄執にこれ以上付き合いきれない。
俺は妹から距離を取り、ロボたちに我が身の安全を守ってもらうことにした。
なお、天空大地には、農場や果樹園、人工培養肉製造設備などもあったが、これらの設備は落下の際の衝撃で完全に破壊され、跡形すら残っていなかった。
俺たちが、墜落した天空大地に残って生活し続けるのは無理だ。
食い物と水を生産する手段がない。
ほかにも、生きていくために必要な物資を生産できる状態でなくなっていた。
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