第10話
貴族としての生活が始まって数ヶ月経った。
平民として暮らしてきた私は、まずは貴族としての知識・実践と公爵令嬢としてのマナーを叩き込まれることになった。
知識面ではこの世界の歴史や地理以外は有栖の地球で十分カバーできた。小学生くらいのレベルなので、かなり余裕だった。これにはリノルド叔父様やセルジオお祖父様が、『うちの子、天才!』と大いに喜んでくれた。
ごめんなさい、天才じゃなくて本当は中身はアラフォーなの。とは言えない。
有栖とアリスを足したら全部で41年生きていることになるのよね。
耳慣れない貴族実践というのは、なんと魔法のことらしい!この世界に魔法があるなんて覚醒前のアリスは知らなかったし、そんなファンタジーなものが存在するなんて驚きだわ!
そもそもこの世界では、魔力や魔法は大概が遺伝するもので、家系能力だと思われているようだ。
成人を迎えるときに魔力持ちであることが貴族でいることの最低条件だとされ、魔力を引き継げなかった者は、平民となるそうだ。平民になっても、両親が貴族の場合は同じ家にも住める。ただ、貴族としての集まりに参加できなかったり、貴族成人のための様々な優遇措置が使えなかったりするだけだ。もちろん、魔力がなくても実力次第ではつける国の要職は多数あるので、あとは個人の努力次第である。
成人貴族に魔力が必須なのは、古からこの国を守護する魔石に、魔力を奉納する義務があるからだそう。
魔力を納めるかお金を納めるか、税金の払い方が身分によって異なるということなのね。
ファンタジー要素は少し薄れてしまったけど、それでも地球から転生した私としては、もし自分が魔法を使えたらいいなってワクワクする。
家庭教師の先生に、私の魔力をすぐに測定してほしいとお願いすると、笑顔で
『ご当主にご連絡しておきます』とだけ返された。
後にお祖父様からは、
『マナーレッスンが及第点になってからしか外出はできないぞ、頑張れアリス!』
と言われてしまったので、仕方なくマナーのレッスンを一生懸命受けつつ、この世界の歴史と地理を勉強している。
この世界の国の名前を含めた会話をしながら、お茶会のレッスンを受けてみたり。
歴史の年表を地球の『いい国作ろう鎌倉幕府』的な表現に落とし込んで語呂合わせをしながら、令嬢の歩き方を練習してみたり。
スチュアート公爵家ではそんな不気味な特訓が続いたのであった。
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