第11話

苦労したマナーレッスンはなんとか及第点評価をもらい、ついでにこの世界の地理歴史もそれなりに習得できた。

また、公爵家での暮らしを通してこの世界の常識も少しずつ習得していった。


この世界(貴族)には信じられない常識がいくつもあるのよ?


例えば、魔力持ちは髪を洗うと魔力がなくなるから洗ってはいけないとか。

(だからセルジオお祖父様やリノルド叔父様から異臭がしたのね。)


メモを取るのは記憶力が悪い人間がやることだからノートを取るのは控えようとか。

(子供の教育によくなさそうね?)


食事は半分以上残して、下位の者に下げ渡さなくてはいけないとか。

(最初からみんなに新しい食事を出してあげられないのかしら?)



髪を洗って魔力がなくなるのが本当なら、私の魔力はもう残ってないかも。実家の仕事柄、毎日髪を洗わないなんて考えたこともなかった。


有栖の記憶を取り戻してから、この世界にない良い匂いのシャンプーとかトリートメントを自作しようかと思っていたのに、この家では洗髪すら許されない。

代わりにエリーナが香油を塗ってくれるのだけれど、正直つらいし痒い。そろそろ心が折れそうなので、急いで対処法を考えたい。


でも表立って洗髪したいなんて声を上げることはまだしない。

エリーナにお説教されるのが目に浮かぶようだし、お祖父様にも叱られて楽しみにしている魔力測定が先延ばしになりそうな気がするのよね。


◆◆◆◆◆


さらに3ヶ月ほど必死に努力して、ついに貴族の一般教養とマナーを完璧に習得できた。

セルジオお祖父様もリノルド叔父様もあまりの早期習得に涙して喜んでくれた。

中身アラフォーなのになんかごめんなさい。


そしてついに魔力測定の許可が降りたのであった。

楽しみ!



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