第55話

意識を刈り取られて倒れ込んだ執事を地面に転がすと、走って追いかけてきた従者役のリアムとワルシャワ男爵家の面々が追いついてきた。


「ナンダッテ子爵様、これは一体どう言うことでしょう?」とワルシャワ男爵。


「この者が逃亡しようとしていたので、捕縛しただけよ。抵抗するから魔法で眠らせたわ。

おそらく私のカップに入っていた毒はこの者の仕業でしょう。余罪も多そうだし、脳内スキャンの魔法をかけてもいいわよね?」


従者役のリアムがそれを慌てて止める。

「その魔法はスキャン後に対象者の人格が破壊されることがありますので、よっぽどの場合でないとお勧めできません。(暴走するな!)」


「人格崩壊は起きないわよ。それは下手な人が魔法を使う場合の話よ。脳の構造を理解していれば損傷は起こさないわ。

全ての情報が暴露されるから、恥ずかしい趣味とかある人は後から心を病むリスクがあるけれど。

いいわよね、ワルシャワ男爵様?」


「・・・。ネリーは信頼できる執事ですが、子爵様に毒を盛ったのが本当であれば、命はないでしょう。ネリーの潔白を証明するためにも、魔法を使ってください。」


「分かりましたわ。同時に映像化の魔法もかけるから、皆さん少し離れていて下さいね。」


古い記憶は大脳皮質に、新しい記憶は海馬にあるはずだから、徐々にスキャンしながらいきましょうか。保存先は魔石でいいかしらね。ダンジョンで倒したカニの魔石がちょうどいいわね。


「脳内スキャン発動、表面記憶だけをじっくりコピーして魔石に保存!」


執事は20分ほどかけてゆっくり脳をスキャンされ、その間に断片的な記憶が音声と共に空中に投影された。


戦闘集団に渡すお金からを少しづつお金を抜いているところ、それを咎めた同僚の紅茶に毒らしきものを入れているところ、毒を戦闘集団から購入していることろ、裏帳簿らしきものをつけているところ、くすねたお金で娼館に通っているところ、全てが詳らかに明かされた瞬間であった。


映像を見たワルシャワ領の面々は、怒りに震える者や涙するものなど様々であったが、執事はそのまま王家の警吏に引き渡されることになり、寝たまま連れていかれたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る