第36話

皇帝ハルジオンがマリーナに話しかける。

「マリーナ、君の経歴は調べさせてもらった。


幼い頃から貴族として教育を受けたにも関わらず、急に追い出され、

それから並外れた魔力と戦闘センスで、隣国の魔術ギルドやわが国のダンジョンで大活躍してきたそうだな。」


「はい、家を追われた身ではございますが、この国とナイトハルト殿下のお力添えで雑貨店まで営むことができ、とても感謝しております。」


「きっかけは、我が息子を毒から救ったことだと聞いたが?口づけの救世主だったか?」


「父上!ニヤつくのをやめてください!!」


ただの唾液交換だったのだけど、なんか大袈裟に思われているっぽい。

ここは正直に話したほうが良さそうね。


「あの時は、倒れているのが殿下とは知らずに不敬なことをしてしまい、申し訳ありませんでした。

あの術は毒成分を検知して解毒剤を生成する私のオリジナル魔法でして、貴族であった頃に自分の身を守るために開発いたしました。


毒は私の舌でしか検知できず、解毒剤は私の唾液に出る仕組みでして。。。

あの時は一刻を争う状況でしたので、不敬な方法での解毒をしてしまいました。」


ナイトハルトはなぜか顔を赤めながら、「唾液、マリーナの唾液」と呟いている。


「謝罪は不要だ。おかげで息子の命は救われたのだ。感謝する。

何か褒美を与えたいが、希望するものはあるか?」


「いえ、お気持ちだけで十分でございます。」


「息子が礼をしようとした際も、見返りを求めず、恵まれない子供への寄付にと申したそうだな。

まだ若いのに、よくできた心構えだな。」


前世と合わせたらアラフォーだし、全然若くないけどね。


「お褒めいただきありがとうございます。」


「それに、君は魔法に長けておるし、雑貨店の商品は飛ぶように売れていると聞く。

今後も、ぜひわが国で活躍してほしいと考えておる。」


「父上!彼女には隣国の子爵位の話が来ているのですよ!」


「まぁ待て。それでなのだがマリーナよ。

わが国の宮廷魔術師団に入らないか?」


宮廷魔術師団なんて初めて聞いたわ。あの国にはなかったし。


「お話をありがとうございます。宮廷魔術師団とはどのような任務を担っているのでしょうか?」


「私たち王族の護衛、災害時の魔物討伐や復興支援、などが主な任務だ。

中には医療や生活のための魔法を研究する者もいる。


入団試験があり、平民・貴族など身分に関係なく完全実力主義で階級が決まる。

試験に合格すれば准男爵の爵位が与えられ、領地はないが身分が貴族となる。」


すごく興味深くてわくわくするわね。

あの子爵家に戻るなんて嫌だったもの、こちらの方が魅力的だわ。


身分は、

平団員が准男爵で階級5、副隊長が子爵で階級4、隊長が伯爵で階級3、

副師団長が侯爵で階級2、師団長が公爵で階級1、となるのだそうだ。


「身分は子爵ではなく准男爵から、となってしまうが、君の実力ならすぐに昇進できるだろう。

どうだろうか?」

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