第35話

ナイトハルトは少し躊躇いながらも、じっとマリーナの目を見て話を続ける。


「本当は君には、この国でいつか功績を上げて爵位をとってもらいたかった。

君の魔法やアイデアにはその価値がある。」


「ハルト、いえ、殿下。もったいないお言葉です。」


「このような言葉で君をこの国に縛り付けたくはないが、つい言わずにはいられなかった。すまない。

今日は父上にその話をしたら、君を連れて来いと言われたのだ。」


「そんな、畏れ多い。」


「大丈夫。謁見ではなく、私的にお茶をするだけだ。」


王宮に着いたマリーナは、ナイトハルトの指示で別室に案内された。


*****


侍女らに青みがかった美しいドレスを着せてもらい、言われるままに日当たりの良いテラスで待っていると、

ナイトハルトが現れた。


「マリーナ!よく似合うな!」


貴族モードに切り替えたマリーナは、

「ありがとうございます、ナイトハルト殿下。本日はお招きいただきまして、心より感謝いたします。」

と、きれいなお辞儀をした。


そこにナイトハルトの父親、つまりこの国の皇帝が現れた。

すごい威圧感ね。さすが経済大国ティーラの皇帝様だわ。


「君がマリーナか。私はハルジオン・フォン・ティーラ。この国の皇帝でナイトハルトの父親だ。」


マリーナは威圧に耐えながら、顔に出さずに、挨拶をした。

「お初にお目にかかります。マリーナと申します。本日はお招きいただきましてありがとうございます。」

キレイなカーテシーができただろうか。かなり緊張する。


「父上!!本日は非公式なのですから、威圧しないでください!」


「ははは、すまない。つい癖でな。マリーナとやら。今日は身分を気にせずに話をしようではないか。」


威圧だったのね。緊張しすぎてどうしようかと思ったけれど、ハルトのおかげで助かったわ。

「はい、ご配慮いただき、ありがとうございます。」


皇帝は自ら持ってきた茶葉を出し、机に置いた。

「これは私の妻がお気に入りのお茶なんだ。そこの君、今日はこれで頼む。」


3人が席に着くと、皇帝がナイトハルト殿下に目配せしながらも、口を開いた。


「さて、何から話そうか。君に話したいことがたくさんあるんだ。」

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