第30話

マリーナを追放したあの子爵家は、養女だったミリアムが待遇の悪さを訴え実家に帰ったため、また新しい養子を迎えようとしていた。


この国では、養子を迎えた場合、成人するまで面倒を見ることが義務付けられている。

が、それを確認するような仕組みはなかった。


しかしながら、ナイトハルトの頼みでたまたま、この国の皇太子カインが調査に乗り出すことになったのである。


その調査の結果、恐ろしいことが次々と判明した。


まず、あの子爵家でこれまで20人以上の子供が養子縁組していたが、誰も今はあの家にいない。


側近が詳細に調べ上げ、そのほとんどが死亡していること、生き残ったのはマリーナともう1人だけであることが明らかになった。


王の許可をとり、カインが直々に騎士団を引き連れて、あの子爵家の関係者を捕縛しに向かった。


◆◆◆◆◆


「王の勅命によって、子爵とその夫人、この家で働く全ての関係者を捕縛する。

逃げ出すものは謀反として、即刻斬り捨てる。抵抗せずに投降せよ。」


カインが声高に宣言し、門から突入すると、大部屋で子爵夫妻がくつろいでいた。


「これは殿下。このような家までお越し下さり、ありがとうございます。

先触れもなく、いらっしゃるなんて、どのような用件でしょうか?」


「事情は捕縛後に話す。捕縛・連行は王の勅命である!即刻従うように!」


「は、承知いたしました」

(と、答えながらも夫人は脱出用の装置を起動しようと床を触ったが)


バシュッ!

空を夫人の腕が飛んだ。


「ギャーーー!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」


「次に抵抗すれば首を飛ばす」


夫人は激痛のあまり叫び続けていたので、全く聴こえていない様子。


「まあよい。死なれたら事情聴取が滞るし、傷口だけ魔法で塞いでおけ。」


カインはそう部下に指示をすると、子爵家の夫妻と下で働く者たちは、大型の魔獣を入れる檻に入れられ、連行されていった。

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