お祭りイベント
katsumi1979
第1話
「今までずっと言わなかったけど、私は武君のことずっと好きだったよ!」
これは俺が7歳の時に言われた言葉だった。それから15年の月日が流れた。
◆◆◆
「武! 今度すごいお祭りのイベントがあるんだけど行くか?」
そう誘ってくれたのは昔からの腐れ縁とも言える仲のヒロからだった。
「誰と?!」
するとヒロは俺を含め、3人と答えた。男3人かぁ。でもお祭り行く気にはあまりなれなかった。
「武、どうせたいしたお祭りじゃないだろって顔したな。」
と、ヒロはそう言うがその通りだ。
「まぁ、説明してやるよ」
と、言われるとこう説明される。ここのお祭りは通常ではとてもあり得ないシステムになっていて、入口について1つしかなくゲートを通過した先にそのお祭り風景がある。
それでいてゲートを通過する条件があるのだ。まず清潔感のない人、見た目が悪い人、服装にセンスなさすぎる人は通過出来ない。あとは、においがきつい人もそうである。その判定は入り口にいる女の子が全て判定。
仮に納得がいかず暴れるとボディガードと呼ばれる人達が集まりつまみ出される。あらゆる格闘技に精通している人達なのでまず勝ち目はないとのこと。
判定がダメだった瞬間諦めるしかない。
「ちょっと待て! そのお祭りのゲートの先ってまさか!?」
と、俺が言うとヒロは
「ご明察。女性しかいないのだよ。女性が屋台主で、しかも取り囲むすべてのスタッフは全員女性だ」
俺は悩んだ。どうせ俺は次も彼女作ったとしてうまくいかないんだろうなって思って戸惑った。
「武、行くよな?」
「おっ、おう」
半ばヒロに強引な形でこのお祭りに参加することになった。
◆◆◆
当日、ものすごい男の数がいた。見る限り1万人はいるのかもしれない。しかしここでゲートに立つ前に並んでいる時点で女の子により判定される。見た目判定のようで、それでいて時間短縮だろう。どんどん帰っていく男たち。
「そうそう、それより忘れてた。ミントのガムを渡しておく噛んどけお前らもだ」
「ありがとう」
と、ヒロが俺と友達に渡した。ところがその後ボディーガードと、ヒロが目が合う。ヒロが頷くとボディーガードは去っていった。
そして数時間が経過した頃、ようやく自分たちの出番が回ってきた。まずはカバンの中身の凶器確認。再度見た目チェックと清潔感、服装チェック、ついでに口臭の度合いもチェックされる。
「OK」
こうして俺たち3人は無事にゲートを通過できた。横に料金所のような場所があり見てみるとほとんどの人が高額なお金を支払っているように思えた。
「あ、そこは関係ないからこっちに」
と、ヒロにそう呼ばれ、誘導された。
◆◆◆
周りの男の人たちはこのゲートを通過できた人だけあってとにかくイケメンが多く、身なりもきちんとしている。出店している子やそのスタッフがとにかく可愛いのだ。例えて言うならテレビに出てるようなみんなが可愛いと思えるアイドルで20代くらいの人達が多い。
そして俺は焼きそばをやっている店へと声をかけ、ナンパした。
「もしよかったらこのあとどう?」
「ごめんねー!先にナンパされちゃってて声かけてくれてありがとうね」
「あはは」
と、友達が笑う。
「何笑ってんだよ!」
「武、まだまだ青いな。そんなナンパの仕方じゃ誰だって断るぜ」
と、友達が言った。
「言ってくれるじゃねぇか! じゃお前が言うナンパってやつを見せてもらおうじゃねぇか!」
すると、友達は今度は違う所で女の子に声をかけた。
見た目はちょっとコギャルって感じの子だった。
「へぃ彼女、祭りが終わったあと、俺とどっか遊びに行かない?」
「うぜー!」
そう言ってそのコギャルは友達の顔にヘラを付けた。
「おあちゃ~!!」
俺とヒロはその時、大笑いした。偉そうなことを言っておきながら断られ、そのうえ顔に軽い火傷を友達は負ってしまった。しかしそれを見たボディーガードがこちらに来てしまい友達を囲う。どうやら話によれば、女の子に不快な思いをさせてしまったということでなんとつまみ出されてしまった!
「助けてくれ〜武〜、ヒロ〜」
こうなると助けようがない。しかしこんなルールもあるとは聞いてない。このお祭り、目の保養としては良いのだがルールがとにかく厳しい。
しかしナンパとはいえ、うまく行かないものである。これで俺とヒロの2人だけになってしまった。ナンパって難しい。でも周りを見ていると、成功している人がほとんどのように思えた。
◆◆◆
お好み焼き屋を通るとなにやら後ろから声が聞こえてきた。
「武君?」
その声は何やら聞いた覚えのある女性の声だった。
「え?」
俺が振り向いたその時、何と昔幼なじみだった頃の
「優衣?!」
「武君!」
「あれ? 優衣ちゃんじゃん、ひっさしぶり~あ、俺はそこらへんで女の子ナンパしてくるね。んじゃ!」
「あ・・・ちょっと・・・!」
そう言ってヒロは走って去って行った。
「行こうよ」
優衣はそう言って腕を組んできた。しかし、懐かしい・・・。15年以来である。優衣は両親の都合で海外へ行ってしまった。その時以来に俺らは今、偶然の再会をしたのだ。
「いつ日本に帰ってきたんだ?」
「昨年よ。あ、ちょっと待っててね」
優衣は店の主に一時的に抜けるように言ってるようだ。何も問題ないそうで抜けることが出来た。
「武君、こっちよ」
◆◆◆
そう言われ、俺は優衣について行ったそして少し移動したその場所は、大きなチョコレート色をしたドアで、建物は赤くハート型をしている。優衣がドアの前で暗証番号のような数字を入力するとドアは開き入室できるようになる。
俺と優衣は2人きりになり、ボディーガードもいそうにない。あたりはとても落ち着いた雰囲気がして、花の香りもするし、コーヒーサーバーもあり、飲み放題だそうだ。
「ここは?」
「ブレイクルームね」
「え? ブレイクルーム?」
「休憩室の事よ。安心してここはね、お互い成立した人しかこれない部屋なの」
「成立って俺は優衣とはまだ」
「大丈夫だから・・・」
と、その後に優衣が続きを何か言いかけたような感じだったが、とりあえずその場は流した。そして俺らは丸テーブルと椅子があったので座った。そこでまずはあれからどうしていたのかその話をしていた。そしてしばらく時間が経過した頃。
「武君、少し大人っぽくなったね」
「どこが?」
「雰囲気や話し方も前とはずいぶん違っているような感じがするよ」
「そうか? 俺はあんまり変わったようには思えないけど」
「もう・・・、彼女とかいるんでしょ?」
優衣がそう言うと、俺はしばらく黙った・・・。
「そうか、いるんだー」
「いや、気になっている子がいるんだ。俺そいつの事から頭が離れないんだ・・・」
「離れなれない・・・?」
「そうだ、だから他に彼女作ろうと思ってもうまく行かないんだ! 要領悪いかもしれないな俺って・・・」
そう言って少し笑ってごまかした。
「そーかそーか! それでまだ告白してないんだね。早く言いなよそう言うのは言わなきゃ何も始まらないんだからさ」
優衣の明るい振る舞いに俺は正直困った。そして続けて優衣は言う。
「ねっ、言いなよちゃんと! 相手に気持ちを伝えるのは大事なことだよ!」
と、言われついに俺は優衣に想いを告白した。
「アホ! 俺はお前のこと言ってんだ!」
俺が思い切ってそう言うと優衣の言葉が止まった。
「お前があの時あんなこと言うから・・・」
そう言って俺は過去を振り返りあの時のことを思い出した。
◆◆◆
あれは優衣と別れる時だった・・・空港まで俺は親に連れられ、優衣を見送る前に優衣は泣きながら俺にこう言ったのをまだ覚えている。
「今までずっと言わなかったけど、私は武君のことずっと好きだったよ!」
「優衣・・・」
「それじゃーね・・・」
優衣は泣きながらそう言った。
この事がきっかけで俺は優衣の存在がなかなか頭から、離れられない存在になってしまった。
◆◆◆
「だから俺はずっとずっと優衣の事が気になってしまったんだ!」
「ごめんね! ごめんね! 武君」
そう言って優衣は俺に抱きついた。
「でも、正直俺はそう言われて少しも怒ってないから安心して! むしろ俺はお前しか愛せないと解ったし、俺もあの時からお前のことがずっと好きだったから。他の女ではダメな不器用な男だ」
「た・・・武君・・・」
するとドアの向こうからノック音が聞こえた。
「俺だよ俺」
「その声はヒロ!」
俺がそういい優衣がドアを開けるとそこにはヒロが1人でいた。ナンパうまくいかなかったのかな?
「わりぃなお楽しみ中」
「あ、いや・・・」
「そろそろここのお祭りのイベント終わるから言おうと思ってね」
「そうか。でもどうしてここが?」
「悪いなぁ武、実は今回のこのイベントもともとうちのオヤジが立ち上げた企画でな、それでイベントスタッフを募集している時に武の昔の彼女である優衣ちゃんが偶然ここへ応募してきたんだよ」
「え?そうなの?じゃあもともとヒロはここの関係者でヒロは優衣を知ってて俺を?」
「そういうことになるな。だからボディガードの人がこの部屋入るのを見たんだよ」
「もしかしてヒロは俺が優衣の事を・・・」
「気持ち、知らないとでも思った?」
「ヒロ・・・」
「何年付き合ってると思ってるんだそれよりもうイベント終わるぞ」
ヒロはそう答えた。ヒロはこのイベントについても話してくれた。まとめるとこうなるそうだ。まずあの集まった人達はネットで宣伝されて集められたそうだ。ただ1つのデメリットは金額がとてつもなく高い。それでも来ると踏んだヒロの父はイベントを開催することにしたそうだ。うちらはヒロが今回俺と優衣を合わせる事を計画をしていたため料金を払わなくても大丈夫だったのだ。俺も小さい頃からヒロのオヤジさんの事は良く知っている仲でもあった。
「そういえばヒロあのゲートくぐるのに本当はいくらかかるんだよ」
「15万円くらいだったかな」
「えぇ?!」
「女性スタッフのレベルには自信があったからみたいよ。あわよくば・・・と考えてる人多かったみたいだしね。中には借金してまで来ようとした人もいるんじゃないかな」
もう1つ疑問があったので聞いてみる。
「ちなみにゲートでつまみ出されてしまうとどうなるの?」
「基本的にはそのままお帰り頂く感じ、返金はされないよ。事前にこのイベントの趣旨規約は伝えて同意してあるからね」
そう、優衣が大丈夫だからといったのは、ヒロがイベント関係者だって知っていたからだ。
それから俺と優衣は付き合うようになった。ところであのつまみ出されてしまった友達はどうしたかというと、ゲートの外でボディガードがヒロの友達だからそこまで厳しくしない対応の変わりに、にらみつけたあとに笑顔で幼児用のおもちゃを渡して、黙って帰したそうな。
なんとも笑える話である。
お祭りイベント katsumi1979 @katsumi2003
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