第500話 夏と言えば海! その1

 兄の航平が言うには『二人での行動が難しいのなら、みんなを巻き込めば良い!』と、得意げな表情で俺に言った。

 この夏休み中に、俺と亜紀だけでは無く“みんな”で、海水浴に行くことで有る。


 虹心は当たり前だが、兄の言葉に大賛成で有り『亜紀さんの方も桃香ちゃんを誘えば、亜紀さんのお母さんも文句は言えなくなるよ♪』と、虹心は笑顔で俺に言って、三國家兄妹と伊藤家姉妹で、夏休み中に海水浴へ行くプロジェクトを立ち上げた。


 このプロジェクトはスムーズに行って、亜紀の方からもこころよい返事が貰え、問題で有る亜紀の母親は、俺の母親が説得してくれた!

『お互い受検で大変な年ですが、それでも気分転換は必要だと感じます…!』などと、俺の母親は亜紀母親に言ったそうだ。


 兄は完全の大人で有るため、俺の母親が付いて来たり、亜紀の両親が出てくることも無い。


 ☆


 夏休み。お盆前のとある日。

 今日。俺達兄妹は、伊藤家姉妹と海水浴に行く。


 海水浴場は色々な候補が出たが、どうせ行くなら海が綺麗な場所が良いと成り、翡翠ひすい浜と言う海水浴場に決まった。

 翡翠浜には電車では無く、兄が借りたレンタカーで行く。


 兄はマイカーを持っているが今回は人数が多いため、レンタカーを借りた。

 レンタカー料金やガソリン代などは、兄からの奢りで有る。


 そして、兄には美人な彼女さんが居るが、その彼女さんもこの海水浴に参加する!

 兄の彼女で有るから、当然と言えば当然だが…///


 兄彼女の名前は小織こおりさんと言うのだが、陽葵先輩を小さくしたような、少し小柄な美人女性で有る!

 だが、話し方は凄く丁寧で有り、兄は何も言わないが、小織さんは何処のお嬢様かと俺は感じている?


 学年(学園)一の美少女で有る亜紀と、俺を好いてくれる妹の虹心。

 そして、兄の彼女で有るが美人の小織さん!!


(何だか俺にとっては一気に、美味しい展開へ成って来たぞ♪)

(これで兄貴が居なければ、完全ハーレムだな!!♪)


 と、俺は心の中で、嫌らしい妄想を考えていると……側に居る虹心が、怪訝そうな表情をしながら話し掛けてくる。


「……兄ちゃんは、さっきから何を“にやにや”しているの?」

「そんなに、みんなとの海水浴が嬉しいの??」


 俺は今。虹心と一緒にリビングへ居る。

 このプロジェクトの立案者で有る兄の航平は、レンタカーの受け取りと兄の彼女を迎えに行っており、母親は仕事の日で有るから既に出勤している。


 兄が戻って来たら、俺と虹心は兄の借りたレンタカーに乗って出発で有る。

 それまでの間はリビングで待機をしている。

 俺は和やかな表情で、虹心に話し始める。


「そりゃあ嬉しいよ。虹心!」

「みんなと、海に行けるのだから!!」


「……そう!」

「なら、良いけど…」


 虹心は何故か、不満を持った表情で俺に言う。

 虹心もこの案には、大賛成していたのに…?


(まさかと思うが虹心は、焼きもちを焼いている?)

(まぁ、虹心の本音では、俺達兄妹だけで海に行きたいのかも知れないが…)


『プッ、プップウゥ~~♪』


 レンタカーを借りた兄が家に戻って来たらしく、外から車のクラクションが聞こえてくる!

 その音を聞いた俺は、笑顔で虹心に声を掛ける。


「虹心!」

「兄貴が戻って来たみたいだ!!」


「……そうだね!」

「なら、行こうか。兄ちゃん」


 虹心は穏やかな表情で返事をして、リビングに事前準備していた荷物をお互い手に持って、リビングから玄関に向かう。

 荷物と言っても、お互いの水着、バスタオル。西瓜やレジャーシートぐらいで有る。


 昼食に関しては虹心の手作り弁当では無く、海水浴場に出店している飲食店で摂る。

 幾ら料理作りが好きな虹心でも、全員分の弁当を作るのは大変だし、それに真夏の時期で有るから、食中毒にも警戒をしなければ成らないから、弁当は作らなかった。


 俺は虹心と玄関から出た時。玄関に面している道路には、黒色の大きな車が停まっている。


(確か……ヴェル○ァイアとか言う車だ!)

(兄貴の奴…。意外に見栄っ張りなんだな!!)


 乗用車でも、お高い分類に入る車で有る。

 今回は人数が多いから、大きい車の方が良いだろうけど……


(兄貴は仕事場でトラックを運転しているとか言っていたから、こんな大きな乗用車も運転出来るのか!)

(だがレンタカーとは言え、ヴェル○ァイアを借りてくるとは…)


 別に、ヴェル○ァイアで無くてもミニバンはたくさん有るし、海に行くだけだからセ○ナクラスでも十分なはずで有る。

 普段は気取らない兄で有るが、やはり兄も一人の人間なんだろう…?

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