第354話 洋風食堂『CLOVER♣』 その1

「わぁい。CLOVERだ!!」

「ここのハンバーグは凄く、美味しいのだよね!!♪」

「お肉も、凄くジューシーだし!!!♪」


 桃香ちゃんは『CLOVER♣』の外観を見て、はしゃぐ表情で言っている!

 桃香ちゃんは、食べ物にはお金を惜しまない子なのだろうか??


(だが、桃香ちゃんの感じからして、自分がお金を出す雰囲気では無いよな?)

(そして、伊藤さんは困った表情をしていた…)

(伊藤さんが桃香ちゃんの分の、ランチ代も出すのだろうか!?)


「亜紀ちゃん!」

「そんなに、心配しなくても大丈夫だよ!!」

「このお店。お姉ちゃんの顔なじみのお店だから、多少の融通が利くよ!!!」


 陽葵先輩はどうやら、俺と伊藤さんの会話を聞いていたらしく、笑顔で伊藤さんに話し掛ける。


「あっ……そうなんですか。陽葵さん!///」

「それは、助かります!!///」


「お母さんから貰った、昼食ランチの予算が超えていたので…///」

「……私も、お小遣いは裕福では有りませんから!///」


 伊藤さんは少し頬を染めて、少し驚いた表情で言った後、微笑みながら陽葵先輩に言う。

 やはり、伊藤さんの所は予算オーバーだったらしい。


 まぁ、俺も……予算オーバーだが!///

 だが、俺の場合は偶の贅沢でごまかせる!!///


「じゃあ、みんな!」

「店内に入りましょうか!♪」


『はい!』


 陽葵先輩は俺たちに向けて笑顔で言った後。陽葵先輩を先頭に洋風食堂『CLOVER♣』の店内へ入って行く。

 俺や伊藤さん姉妹も笑顔で返事をした後。陽葵先輩に続いて店内へ入っていく……


『カラン、カラン、―――♪』


 お店の出入口ドアに付けられている、ベルの音色ねいろが俺たちを最初に出迎えてくれる。

 洋食店店内は、真優美さんお店(撫子)の様に落ち着いた内装で有る。


 店内に入ると……40代前半だと見られる女性が、厨房の方から出てくる。

 私服の上にエプロンを着けており、家庭的なお店を感じる。

 店内はランチタイム終了間際でも有るのか、二組のお客さんがいるだけだ。


「いらっしゃいませ~~!」


「あら……陽葵ちゃん!♪」

「お久しぶり~~。元気~~?♪」


 お店の女性は陽葵先輩と面識が有るらしく、初めの内は営業スマイルで有ったが、陽葵先輩の顔を見た途端、普通の笑顔に変わって陽葵先輩に声を掛ける。


「お久しぶりです。日向ひなたさん!♪」

「はい。私や姉も元気に過ごしております!!♪」


「今日は、学園の後輩たちと一緒にランチをしに来ました!♪」


 先ほどの女性は、日向さんと言うらしく、陽葵先輩は日向さんに笑顔で話し掛けて居る。

 日向さんは髪の毛の長い人で有るが、飲食店のスタッフらしく、その髪を一つに束ねて飲食店らしい髪型にしてある。


(日向さんって言う人は……40代以上だと思われるが、結構若く見えるな!///)

(店の外観から、おじいさん・おばあさんが切り盛りしている店だと感じていたが、違っていたか!!///)


「まぁ、それは嬉しいわ。陽葵ちゃん!♪」

「可愛い後輩たちだね!!♪」


「では、お席に案内するわね!♪」

「陽葵ちゃんたち!!♪」


 日向さんは陽葵さんに笑顔で言い終えた後。席の案内を始める。

 俺たちは日向さんの後を付いて行く。


 このお店(CLOVER)は、繁華街に有る飲食店である所為か、店内は決して広いとは言えず、5~6組の人が入れば満席になる広さで有る。

 やはり、ランチタイム時は、行列が出来る飲食店なんだろうか?


 俺たちは店の出入口側席では無く、奥側の席に案内される。

 出入口側は窓側の席になる上、道路側に面しているので、ゆっくりと食事をするには不向きかも知れない?


「はい。こちらへどうぞ!♪」

「しばらくしたら、注文を伺いに来るね!♪」


 日向さんは笑顔で席を案内した後。俺たちへ言葉を掛けたのち、俺たちの側から一旦離れる。

 当初、俺が描いていたランチタイムとは変わってしまったが、これはこれで、良いのかも知れない?

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