第351話 俺の真の本命?

「……丁度、三國君の横が空いているし、亜紀ちゃんたちが来るまで座っておこう!」


 陽葵先輩は和やかな表情で独り言を言い終えると、俺の真横に座り始める。

 俺の横は元から空いている。

 俺の真横のソファーに座った陽葵先輩は、和やかな表情で俺に話し掛けてくる。


「三國君!」

「亜紀ちゃんは、かなり三國君を意識しているね!♪」

「お姉ちゃんから、その辺りも聞いていたけど、かなり良い関係の感じがするね!!♪」


「……やっぱり、陽葵先輩は全て知っていましたか…!」

「二村さんのことから、今日香ちゃんのことまで……」


 俺は『困ったな…』の表情で陽葵先輩に言う。

 陽葵先輩は、困った微笑み表情で俺に話し始める。


「うっ、うん…///(汗)」

「お姉ちゃんが三國君に関することを全て、私に教えてくれちゃったからね!///」


 此処で陽葵先輩は、真面目な表情に変わって言葉を続ける。


「えっと……それでね、三國君?」

「此処でこんな事を聞くのは、本当は良くない行為だと感じるけど……三國君の真の本命は誰かな?」

「私も三國君とは親友関係だし、教えたくない気持ちも分かるけど、教えてくれないかな?」


(俺の真の本命か……)


「……誰でしょうね。陽葵先輩…?」

「実のところ。俺も良く分からないのですよ…」


「伊藤さんは俺を振った割には、未練を持っている感じがするし、小鞠ちゃんも現在付き合っている人が、本当に好きでは無いらしい……」

「今日香ちゃんも……良い子なんですけど、心が幼すぎると言うべきか……」


 俺は困った表情で、陽葵先輩に話す。

 すると、陽葵先輩は穏やかな表情で俺に言い始める。


「……三國君も、結構モテる子なんだね!///」

「けど……お互いがその先へ、進展出来ていないんだよね!」


「はい…。陽葵先輩の言葉通りですね…」

「俺の本来の目標と言うのも変ですが、俺の第一目標は津和野小鞠ちゃんで有り、小鞠ちゃんと関係を深めましたが、実際は小鞠ちゃんより、二村さんや伊藤さんを望んでしまいました…///」


「俺があの時。変な気を犯さず、小鞠ちゃんだけに目標を絞っていれば今頃、小鞠ちゃんと恋人関係に成れていたかも知れません…///」


 俺は、少し遠い目をしながら陽葵先輩に言う。

 俺の恋愛事情が此処まで“ごたごた”に成ってしまったのは、俺が欲を出してしまったからで有る。


「ふぅ…」


「難しい所だね。三國君…」

「三國君の言う通り。欲を出さなければ、小鞠ちゃんと言う子と三國君は付き合えるかも知れないけど、結局最後は破局を迎えるでしょうね…///」

「当時の三國君では、小鞠ちゃんで満足出来ないと思うから……」


 陽葵先輩は軽い溜息を吐いた後。悩んだ表情で俺に言う。


「……」


(小鞠ちゃんでは、満足出来ないか……)

(そう言われてしまうと、反論が出来ないな!!)


 俺は一貫性を持って、恋人作りをしていた訳では無い。

 俺はとにかく、俺を好いてくれる人なら誰でも良いで現に、同級生女子達へ声掛けをしていた。


 そして、ひょんな事に、俺自身に“モテ期”が突然訪れて、予想外な人たちから一気に、好意の目線を貰えるようになった。

 小鞠ちゃんはしかり、ついこの前まで生意気で有った妹の虹心まで、今では俺をほぼ恋人目線で見ている。


「私は三國君を、良い人では見ているけど……まだ恋人候補には少し遠いね!///」


 陽葵先輩は困った笑顔で俺に言う。

 俺は陽葵先輩の事を有る程度知っているが、陽葵先輩は俺の事を知っているようで知らない。


(俺の恋人作りで、現段階で現実的な人は、伊藤さんか今日香ちゃんぐらいか……)

(だが、二人とも大きな障害が有るんだよな!///)


 伊藤さんの場合は、消息不明の片思いの人。

 今日香ちゃんの場合は、新倉洋菓子店の跡継ぎ問題。

 どれも、簡単に解決出来る問題でない。


「あっ……亜紀ちゃんたちが来たようだね!」


『てく、てく、―――』


 陽葵先輩は特別展の方を見て、陽気な口調で言う。

 俺はその方向へ顔を向けると、伊藤さん姉妹が俺たちの方へ近付いてくる。


(此処からは陽葵先輩とのデートでは無く、陽葵先輩を主導にしたグループ散策だな)


 俺はそんな事を感じながら、こちらにやって来る伊藤さん姉妹を見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る