第333話 台所で妹に話す その3

「でも、兄ちゃんってさ、美術方面って元々興味が無いよね…」

「もしかして、学校行事以外で美術館に行くのは初めてじゃない?」


 虹心は尋ねる表情で聞いてくる。

 俺は困った笑顔で言い始める。


「うん…。全く興味が無い!!」

「博物館ならまだ楽しめるけど、美術館は一人だったら絶対に行かないね!」


「相手が譲羽先輩だからとはいえ、良く引き受けたね」

「兄ちゃん……」


 虹心は呆れ返りながら言う。

 だが、選択肢がそれしか無いから仕方ない。


「けど、陽葵先輩と一緒に名美崎なみさき市まで行って、市立美術館の特別展を見て終わるわけでは無いと思うから、その時間帯は我慢しているよ!」


 俺は和やかな表情で虹心に言う。

 虹心はコーラを一飲みしてから、尋ねる表情で俺に聞いてくる。


『ごく!』


「あぁ…。予定はこれから決めるんだよね。兄ちゃん!」


「そうだよ。虹心!」

「これから、出掛ける日と内容を決めていく……」


 俺は穏やかな表情で虹心に言う。

 すると、虹心は顔を上に向けながら俺に言い始める。


「……美術館の近くに繁華街が有るから、美術館の後はそっちに行くのかな?」

「でもそうすると……かなりの高確率で、学園の人達と遭遇しそうだな!」


「繁華街に行ったらそう成るね」


 俺は理解した表情で虹心に言う。

 名美崎の市立美術館は市の中心部に有って、県内最大の繁華街も徒歩圏内に有る。


 その繁華街には食べ物屋さんから始まり、多数の衣料品店やアニメにゲームショップ。更には電気屋さんも有る。

 まさに、若者が集まる場所と言っても良いだろう。


「私は普段……名美崎までは行かないけど、兄ちゃんにとっては“おのぼりさん”に成りそうだね!」


「“おのぼりさん”は言いすぎだぞ。虹心!!」

「俺だって、たまには行っているから……(汗)」


 虹心は“からかった”表情で言った後。俺は困った表情で言う。

 名美崎市の繁華街にアニメやゲームショップも有るが、俺は其処まで行って買い物をすることは少ない。


 殆どの物は、駅前に有るア○メイトで揃ってしまうし、ムフフなゲームは俺専用のパソコンが無いから出来ないし、俺はまだ学生だから多分買えないだろう?

 それに俺はファッションにお金を掛けてないから、名美崎の繁華街で衣類を買うことも殆ど無い。


 そのため、俺も虹心同様。名美崎の繁華街に行くことは年に数回有るかだ。

 虹心は和やかな表情で、俺に話し掛ける。


「まぁ……相手は先輩に成るから、却って甘えてみるのも一つの手かもね!」

「『譲羽先輩……僕、こんなとこと初めて来ました!?』とか、言ってみるのも一つの手だよ!」


「いや……それは不味いだろ。虹心…///」

「この年に成って、名美崎の繁華街初デビューですとか陽葵先輩に言ったら、確実に引かれるよ!!///」


 俺は頬を少し染めて、焦った表情で虹心に言う。

 俺が中等部ならまだしも、高等部に成って繁華街初デビューでは、俺は箱入り息子に成ってしまう!!


「けど、譲羽先輩と行く以上は、楽しい時間に成る良いね!」

「兄ちゃん!!」


 和やかな表情で言う虹心。俺も虹心と同じことを思う。

 最初で最後の陽葵先輩とのデートに成っても、悔いが残らないようにしたいと俺は感じた……


 ☆


 虹心への報告は終わり、虹心は再びリビングへ戻って行った。

 虹心はこれからテレビドラマを見るそうだが、母親への報告はしないよな?


 お風呂が空いているそうなので、俺は入浴に向かうことにする。

 一度自室に戻って、着替えを持って入浴タイムに入る。


 ……


(これから予定を決めて……陽葵先輩との、美術館デートに成って行くわけだが、良い思い出に成ると良いな!!)


『ザパン!』


 そんな事を思いながら、俺は体を洗い終えて湯船に浸かる。

 来月の何時に成るかは未定だが、陽葵先輩との美術館デートが本当に楽しみだ!!

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