第332話 台所で妹に話す その2

 真優美さんのお店で行われた出来事を、俺は虹心に話している。

 俺が話している間。虹心は質問を一切せず、頷きながら聞いている。


 ……


「まぁ、そんな訳だ。虹心!」


 俺は穏やかな表情で虹心に話し終えると、虹心は尋ねる表情で聞いてくる。

 此処からは虹心の質問タイムになる。


「兄ちゃん!」

「大体、話しの内容は理解出来たけど、兄ちゃんはそれで良いわけ?」

「兄ちゃんにとって、余りメリットが無い感じがするけど……」


「良いも悪いも……今日香ちゃんには冷却期間が必要だし、それに真優美さんから頼まれた事でも有るし……」


 俺は少し困った表情で虹心に言う。

 だが、虹心は問い詰める表情で更に聞いてくる!


「兄ちゃん! それでは、二股に成っちゃうぞ!!」

「真優美さんの気持ちも理解出来るけど、それで譲羽先輩と兄ちゃんに関係を持たせるのはやっぱり変だぞ!」

「兄ちゃんはかなり、新倉先輩を気に入っていた癖して!!」


「……そうは言っても虹心!///」

「これは、ほぼ決定事項なんだ!!///」


 俺は頬を少し染めて、困った表情で虹心に言う。

 そして虹心は、表情を曇らせながら言い始める。


「決定事項って……。美術館に一緒へ行くだけで終われば良いけど、もし本当に……譲羽先輩が意識を持ち始めたら、兄ちゃんはどうするのよ!///」

「そのまま、関係を深めちゃうの!?///」


(虹心は俺に陽葵先輩を推した癖に、事態が進んだら急に及び腰に成って……)

(虹心はどうしたいんだろ……)


 俺は心で感じたことを虹心に聞いてみる。

 俺が陽葵先輩と美術館に行くのを、虹心は間接的に反対してるからだ。

 俺は困った表情で虹心に話し掛ける。


「じゃあ、虹心はどうしたんだ!///」

「今から真優美さんに連絡して、断りの連絡を入れるべきなのか?」

「虹心がそうしろと言えば、そうするが……」


「うーん。言いたくないけど、兄ちゃんは“出し”にされている感じがする!」

「『あこがれの譲羽先輩と、一回でも遊べて良かった!』なら良いけど……」


 困った表情の、歯切れの悪い口調で言う虹心。

 だが、虹心の言う通りだ。


 陽葵先輩が異性に興味を持たないことを、真優美さんは心配している。

 俺は現在。フリーに近い状態で有る。


 俺と今日香ちゃんの問題は、どちらかが引かないと解決しないけど、お互い引く気は無いだろう……


 真優美さんに都合よく使われているのを、俺は自覚しているし、虹心のその辺りを心配している。

 けど、俺は陽葵先輩と関係を出来れば深めたいし、それに万が一深まっても、真優美さんはそれを許してくれると言っている。


「陽葵先輩とデートと言うか、遊びに行くのは先ず、最初で最後に成るだろう…」

「実際……陽葵先輩は乗り気では無いからな!」


 俺は澄ました表情で虹心に言う。


「兄ちゃんがそう思っているなら良いけど……でも、こんな風に成るとは私も予想外だったな…」


 少し悲しい表情で言う虹心!

 虹心はどの意味で、悲しい表情で言っているのだろうか?


 俺がもてあそばれているのを悲しんでいるのか、それとも、俺が陽葵先輩と関係を持ててしまったことを悲しんでいるのか!?

 俺は穏やかな表情で、虹心に話し掛ける。


「そんな悲しい顔をするな。虹心!」

「俺は陽葵先輩と一緒に、美術館の特別展に行くだけだ!!」


「この出来事で陽葵先輩と関係が深まることは無いだろうし、今日香ちゃんにバレることも無いだろう!!」


「兄ちゃんは楽観的だね…!」

「まぁ……兄ちゃんらしいけど…!!」


 困った微笑み表情で言う虹心。

 俺を心配してくれるのは嬉しいが、これはほぼ決まったことで有る。


 くつがえすことは出来るけど、それをしてしまうと真優美さんを裏切ることに成ってしまう。

 それに俺はこれを切っ掛けに、陽葵先輩と関係が深まることを期待していた……

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