第272話 ニュータイプ その2

「ねぇ、あなたのことを、虹心ちゃんと呼んで良い?♪」

「その方が、親近感が湧くし!!♪」


「あっ、はい…。大丈夫ですよ。新倉先輩///」


 新倉さんは笑顔で虹心に聞く。

 相手が学園の先輩と知ってしまった以上、虹心は控えめな笑顔で言う。

 きっと本音は……新倉さんと、関わりたく無いのかも知れない!?


「やったぁ~!♪」

「じゃあ、今から虹心ちゃんと呼ぶね!♪」

「よろしくね、虹心ちゃん!!」


「あっ、はい……よろしくお願いします」

「新倉先輩…///」


 新倉さんは笑顔で言うが、虹心は“たどたどしい”口調で言う!

 冗談抜きで、虹心は新倉さんとは馬が合わないのだろう。

 虹心と話し終えた新倉さんは今度、俺の方に視線を向けて、和やかな表情で声を掛けてくる。


「今度は男性だから、君で良いね!!」

「あっ、でも、年上の感じがするから、あなたの方が良いか!♪」

「あなたも初めて見る人だけど、今日はカップルでケーキを買いに来てくれたの?」


(新倉さんの目には俺たちが兄妹では無く、カップルで見ているのか!)

(真優美さんは俺たちを直ぐに見抜いたが、新倉さんはテンプレートで来たか!?)


「えっと……さっき、自己紹介を聞いていましたので、新倉さん!///」

「俺は、虹心の兄になる。三國武蔵です!」

「新倉さんや虹心と同じ、葉月学園に通っており、高等部二年生になります…!」


「あっ……武蔵君は、二年生なんだ!」

「あぁ!! そうすると、僕は三國先輩と、本来は呼ばないと駄目だよね!///(汗)」


 初めの内は澄ました表情で言っている新倉さんだが、俺が先輩に当ると気付き、驚いた表情と素っ頓狂な声を出しながら言う。


(何だか……この子。憎めない子だな///)

(悪気が有って言っている訳では無いから、怒りや不満が湧いて来ない!)


「別に大丈夫だよ。 新倉さん!!」

「俺はそう言うのを気にしないから!!」


 俺は爽やかな笑顔で新倉さんに言う。

 すると、新倉さんは伺う表情で聞いてくる。


「あっ、そうなの!」

「じゃあ、三國先輩では無く、武蔵君と呼んでも怒らない…?」


「うん。大丈夫だよ。新倉さん!」

「それに俺も、新倉さんのことを、今日香ちゃんや今日香と呼んでも良い?♪」


「うん。もちろん良いよ。武蔵君!♪」

「私は武蔵君の後輩になるから、今日香と呼び捨てで呼んでも平気だよ!♪」


 俺が和やかな表情で言うと、今日香ちゃんは笑顔で言ってくれる。

 今まで出会った女性の中で、一番スムーズに事が進んでいるぞ!!

 もしかして、新倉今日香ちゃんが俺の運命の人か!?


「……」


 虹心は俺と今日香ちゃんの様子を、微笑ましい表情では無く、呆れた表情で見ている!

 虹心の中では『有り得ない!!』とでも、感じているのか?


「それで武蔵君!」

「武蔵君とは今日初めて会ったけど、このお店には偶然入って来たの?」


 今日香ちゃんは和やかな表情で、俺に聞いてくる。

 俺も和やかな表情で、今日香ちゃんに答える。


「俺は、虹心の付き添い見たいので来たけど、喫茶『撫子』から教えて貰って来たんだ!」


「撫子…あぁ、譲羽さんの所だね♪」

「譲羽さんはこのお店一番の、超お得意さんだからね!!」

「なんせ、焼いたケーキの半分近くは、譲羽さんの所(喫茶店)へ卸しているからね!♪」


「えっ!?」

「ケーキの半分も、真優美さんの所(撫子)に卸しているの!!」


 今日香ちゃんが笑顔で言う中、俺はその言葉を聞いて驚く!

 幾ら、新倉洋菓子店と撫子の関係が有るからと言って、作ったケーキの半分も卸すと言うことは代理や委託販売にも取れてしまう。

 今日香ちゃんは、困った微笑み表情に成って話し始める。


「武蔵君や虹心ちゃんも商店街を通って、このお店に来てくれた筈だけど、見ての通り閉店しちゃったお店も多いんだ…!///」

「当然、商店街が寂れると、人通りも少なく成るし、常連さん以外は来なく成るから、売り上げも自然と落ちていく……」


「店の売り上げが毎月落ちて行ったら……お店の未来は、想像出来るよね!」

「武蔵君……」


 俺は余計なことを聞くべきでは無かったと、思わず感じてしまった!///

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