第273話 一気に仲良し!?

「今日香ちゃん。言いたくは無いけど……お店は潰れちゃうね!」


 俺は困った表情で今日香ちゃんに言う。

 だが、今日香ちゃんは困った微笑み表情で言い始める。


「そう…。その通りだよ。武蔵君……」

「けど、その危機を脱出出来たんだ!」


「ケーキを焼いているのは、私のおじいちゃんなんだけど遂に、お店の採算がギリギリになった時!」

「おじいちゃんがお店を閉じるべきかを、真剣に悩み始めた頃。譲羽さんが来店して、撫子にケーキを卸して欲しいと頼みに来たのだよね!!」


「私は詳しいことを知らないけど、おじいちゃんが言うには、譲羽さんの子ども時代から知っているらしいし、かなり強めのお願いをされた上、一定の量を譲羽さんが買うと約束をしてくれたから、お店が続けられるように成って、閉店の危機は免れた訳!!♪」


 困った微笑み表情で話しているが、最後の言葉は笑顔で言う今日香ちゃん。

 真優美さんが、新倉さんの所からケーキを仕入れているのは、真優美さんが子どもの頃から知っている味だったからか……


(世の中捨てたもんじゃ無いな!)

(と言いたいけど、真優美さんの所も大変だな……)


 幾ら『撫子』が常連さんに愛されているとは言え、真優美さんの所で毎日、仕入れたケーキを完売出来るわけでは無いだろう。

 俺が初めて、伊藤さん達と真優美さんの所へ訪れた時。無料タダでミルフィーユを食べさせて貰えたが、その理由は廃棄をするのが、もったいないからの理由だった…


 年配の人達と成ってくると、ケーキのような洋菓子類を、毎日好んでは食べないだろう。

 日によっては、かなりの廃棄数を出していると予測する……


(だけど、そんな事を思っても仕方ないか!)

(真優美さんの意志で行っている訳だし…)


 俺は気持ちを切り替え、穏やかな表情で今日香ちゃんに話し掛ける。


「そう言ったことが有ったんだ……けど、閉店の危機が逃れられて良かったね!」

「今日香ちゃん!!」


「そう。武蔵君!」

「めでたし、めでたしと言いたいけど、おじいちゃんも大分年が来ているからね…」

「まだ……2~3年は問題無いと思うけど、その後がね……」


 今日香ちゃんは穏やかな表情で言うが、最後の方は少し寂しい表情に変わっていく。


(…このお店は、跡継ぎがいないのか?)

(まさか、おじいさんと今日香ちゃんだけの家族では無いだろ!!)

(ラノベや漫画の世界では有るまいし!!///)


(もし、俺が今日香ちゃんと関係を深めて、順調良く将来を考えたら俺は……この店を継ぐことに成る!?)


 俺は、心の中でそんな事を考えてしまうが、ケーキ職人に成るには非常に難しいと、テレビやネットで見た覚えが有る!!

 専門用語は勿論、ケーキは芸術面の要素も兼ね備えているから、美的センスだって求められる!!


 俺は料理なんて殆どしたことが無いし、そもそも興味が無い!

 そんな俺に、ケーキ職人やパティシエなんかに成れる訳が無い!!


「今日香ちゃん…!」

「もし、この店に正式な跡継ぎがいないなら、今日香ちゃんが後を継いだら良いでは無いの!」

「今日香ちゃんなら、内部のこともよく知っていそうだし!!」


 俺は心で感じたことを、和やかな表情で今日香ちゃんに言ってみる。

 けど、今日香ちゃんは困った微笑み表情で言い始める。


「あはは……武蔵君。僕は作るより、食べる方が専門だからね!///」

「おまけにケーキを作るのはおじいちゃん。販売は私と役割分担に成っているから、ケーキ作りのことを知っている様で知らないし…///」


(今日香ちゃんは食べるのが専門か……それなら、仕方ない!)

(こう成ったらいっそ、虹心にケーキ職人を目指して貰うか!?)

(料理も旨く作るし、出来ないことは無いだろう!!)


「……あの、兄ちゃんと新倉先輩!///」

「二人でのお話しも良いけど、私はケーキを買いに来たのだから!!///」


「新倉先輩……苺のショートケーキ。4個お願いします…!」


 虹心は不機嫌そうな表情をさせながら、俺と今日香ちゃんに言ってくる!

 小鞠ちゃんでは無いが、虹心は“やきもち”を焼いたか?


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