第245話 喫茶店のランチ その1

「まぁ、そう言う訳だから、兄ちゃん!」

「カレーカツ丼は、飲食店とかで食べて♪」


「豚カツを惣菜品で代用したり、レトルトカレーを使えば簡単には出来るけど、その分食費が凄く掛かってしまうからね!///」


 虹心は困った微笑み表情で言う。

 虹心も母親の財布を預かる身分だから、三國家の経済状況が分かってしまうのだろう!?


 俺たちの両親は共働きで有るが、俺たち三人兄妹は中学から私立はづき学園に通っているので、その辺りの経済的負担も大きいのだろう!?

 兄は大学を卒業しているし、俺や虹心も大学へ進学すれば、その学費がまだまだ掛かる!!


 それに、虹心が政治家を本当に目指したらもっと大変だ!?

 あの時の言葉は、冗談だと信じたいが……


 ……


 虹心との会話が一段落付いた所で、俺はおしぼりの袋を此処で破って、手を拭き始める。

 真優美さんの所の“おしぼり”は、最近主流に成っている紙おしぼりでは無く、昔ながらのハンドタオルおしぼりで有る。


 虹心の方はポシェットから、スマートフォンを取りだして、お冷や(水)を飲みながらスマートフォン画面を見ている。

 料理が来るまでのしばらくの間、各々の時間を楽しみ始める。


(喫茶店に来た時。少しのハプニングとアクシデントが有ったが、どうにか収まったな!)

(後はこれから食べる、真優美さんお手製(?)のカツ丼が美味しければ、何事も無く終わるだろう……)


 俺は心の中でそう思いながら、お冷やを飲む。

 水が旨いお店は、料理も美味しいと良く耳にするが、俺には良くその違いは分からなかった?


 だが、普段飲んでいる水道水とは、少し違う気がした??


 ……


「はい。二人とも、お待たせしました!!」

「本日の日替わりランチです!♪」


 ランチのカツ丼が出来上がって、真優美さんが俺たちの元へ配膳に来る。

 真優美さんは笑顔で言いながら、俺たちの元へ配膳を始める。


 カツ丼大盛りは、ご飯(白米)だけを増やしたタイプで有った。

 ここで、キングサイズのカツ丼が出て来ても困るだけだが…///


 それを静かに見守る、俺と虹心。

 俺は、それを見守りながら頭で考え始める。


(真優美さんが作ったカツ丼は、王道タイプのだな!!)

(豚カツの上に、溶き卵がかけられて煮た物が、丼に盛られている!!)


(味噌汁は……ワカメとネギかな?)

(漬物は……コンビニ弁当に良く入っている、ピンク色の漬物!)

(定食屋では無く、喫茶店のランチだからこんな物か?)


「……」


 虹心も品定めをする様に、真優美さんの作ったカツ丼を観察している。

 穏やかな表情と言うより、目を細めて真剣に見ている感じだ!!


(やっぱり、自然と他人の料理と比較をするのか?)

(良く考えて見れば……虹心と喫茶店でも外食をするのは、久しぶりかも知れない…!)


 俺の家は両親が共働きで有るが、意外に家族や兄妹での外食は少ない。

 虹心が料理を作る以前でも、母親の夜勤時にはスーパーで売っている惣菜や弁当。ファストフードの持ち帰り品が、台所のテーブルに置いて有った。


 虹心が料理を作るように成ってからは当然、外食の言葉は完全に無く成って、出前すら取ることが少なく成った!!

 料理宅配サービスが主流の時代に、三國家は時代の波に逆らった生活をしている?


「じゃあ、三國君たち!」

「食後のドリンクを持って来て欲しい時は、テーブルの端に置いて有る、呼び鈴を鳴らしてね!!」


 配膳を終えた真優美さんは笑顔で言いながら、俺たちの席から離れていく。

 お店の呼び鈴は、インターホンタイプのでは無く、本物の呼び鈴で有った!


「じゃあ、虹心食べようか!」


 俺は、和やかな表情で虹心に言う。

 虹心も和やかな表情で言う。


「兄ちゃん。見た感じは、美味しそうだね!」

「見た感じは!!」


 虹心は和やかな表情で言うが、嫌みを含ませた口調で言う?

 真優美さんに対抗心でも、燃やしているのだろうか??


 俺も、真優美さんが作ったカツ丼が楽しみだ!

 味の予想は付くが……果たして、俺や虹心好みの味付けなんだろうか……

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