第236話 弟の務め その2

「虹心…。ちょっと良いか?」


『あっ……やっぱり、兄ちゃんか!!』

『うん。良いよ!』

『入って来て!!』


 俺は小声で落ち着いた口調で言うが、部屋の中に居る虹心からは、陽気な口調が返ってくる。


「じゃあ、入るぞ。虹心!」


『ガチャ♪』


 俺は一言断わってから、虹心の部屋のドアノブを下げる。

 俺は虹心の部屋に入って、部屋のドアを閉める。


 俺が部屋のドアを閉めて、体を虹心の方に振り向かせると、虹心は不思議そうな表情をして話し掛けてくる。


「急にどうしたの?」

「兄ちゃん!!」


 虹心の姿はパジャマ姿で有り、ベッドの上に座っている。

 ベッドの側には化粧品らしき物が有るから、就寝前のお肌手入れとかをしていたのかも知れない?

 虹心は美貌びぼうにも、気を遣っているんだな……そうでないと、美少女の維持が出来ないか!?


「少し……晩ご飯の時のことが、気に成ってな…!」


 俺は心配した表情で虹心に言うと、虹心は『あっ、なんだ!』の表情をして話し始める。


「あぁ……あのことね!」

「お兄ちゃんが急に、私が作った冷やし中華にマヨネーズをかけたのは、確かに許しがたいことだけど、あの後調べたら、そう言った文化が有るらしいね…」

「けど……私が一生懸命作った料理に、マヨネーズは無いよね…!」


 最後の文章は、悔しさを含めた口調で言う虹心。

 やはり……虹心は引っ掛かっていたか。

 俺は穏やかな表情で、虹心に話し掛ける。


「虹心の気持ちも分かるよ!」

「マヨネーズは万能調味料だからこそ、考えてかけなければ成らないよね!!」


「……兄ちゃんは、それを心配して来てくれたの?」


 虹心は澄ました表情で聞いて来る。

 俺は、困った微笑み表情で言い始める。


「そりゃあ心配するよ!///」

「兄と虹心が喧嘩なんて今までして来なかったし、俺も虹心とは関係が深いからな…」


「……心配してくれて、ありがとう!//////」

「兄ちゃん!!//////」


 虹心は頬を染めて、困った微笑み表情で言ってくれる。

 虹心は和やかな表情に変わって、言い始める。


「まぁ……冷やし中華にマヨネーズは決して悪くは無いし、兄ちゃんが自室に戻った後、お兄ちゃんもそのことで謝ってきたから、全ては解決だよ!!」

「兄ちゃんが其処まで心配していたなら、団らん後に私が、兄ちゃんに一言言いに行けば良かったね!!」


「なんだ……兄とも仲直りしたか…。それは良かった…!」


 俺は少し驚きの表情で言う。

 あの時の兄は、罪悪感を感じている雰囲気では無かったのに謝っているとは!


「『言葉だけでマヨネーズをかけるのでは無く、きちんと虹心からの了解を貰ってから、かけるべきだった』と言ってくれたから、私は笑顔で許した!!」


 嬉しそうな表情で言う虹心。

 何だかんだで、虹心はまだ兄が大好きなようだ……


(虹心の部屋に来たついでに、さっき兄に言われた事も言っておくか!)


 マヨネーズ問題は、俺がいない時に全面解決したが、まだ問題は残っている。

 兄が俺たちの関係を気にしている事と、虹心が俺を誘惑した時のように、兄も誘惑していた事で有る。


(兄への誘惑は言う必要も無いが、兄が気にしているだけは、言っておいた方が良いだろう……)


 俺と虹心が問題ないと言い切っても、母親や兄が心配していたら、俺たちの関係は今までようには行かなく成る。

 俺は困った表情で、虹心に言い始める。


「虹心……虹心が風呂に入っている間に、兄貴に言われたんだ!」

「俺たちの関係が近付きすぎていると……」


「!」


「……」


 俺の言葉で一瞬虹心は『えっ?』の表情をするが、澄ました表情に成る。

 けど直ぐに、困った微笑み表情で虹心は言い始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る