第234話 兄と過ごす時間 その2

「あっ……まぁ、そう……何て言うか、あれから同級生の女子とも、上手く行っていなくてね!///」


「……」

「そうか……それは、悪いことを聞いてしまったな!」


 俺が”うろたえた”表情で言うと、兄は察したらしく、申し訳ない表情で言う。

 けど、兄は少し真剣な表情に変わって、俺に話し始める。


「武蔵も……虹心の性格は良く知っているだろうが、線引きだけはきちんとして置けよ!」

「僕も今の彼女と関係が深まるまでは、虹心からかなり強めの、モーションを受けていたからな!!」

「流石に……家族の前で彼女を紹介したら、虹心は引いてくれたが……」


「!」


(虹心は……兄にも、俺と同じように誘惑していたのか??)

(だが、俺と虹心の年齢差は誤差の範囲内だが、兄と虹心の場合は年が離れすぎて居るぞ!!)


 兄に今の彼女が出来たのは、兄の大学生時代らしいが、父親を含む俺たち家族に向けて紹介されたのは、去年の春先で有る。

 それ以前にも、兄の彼女は三國家へ遊びに来たことが有るが、将来を意識し合う関係に発展するとは、当時の俺は思っていなかった……


 何時から虹心が兄へ、モーションを仕掛けていたかは知らないが、客観的に考えれば小学生の高学年付近に成るだろう……


(虹心が兄を誘惑する為に、服とかをまくっていたら完全洒落しゃれに成らないぞ!!)

(あの時の虹心はまだ、ブラも……余計なことは考えないで置こう!!///)


「兄貴……そんなに、虹心から好かれていたのかよ…!」


 俺は引き気味の表情で言う。

 俺の言葉の後、兄は澄ました表情で言い始める。


「武蔵も知っているが、僕はかなり虹心から好かれていたからな…!」

「僕と虹心はかなり年が離れているし、父さんも仕事の関係で普段は家に居ない……」

「そう言ったのを含めて虹心は、僕を兄と父親の両方で、見ていたのだろうな……」


「兄貴……そうかも知れないね!」

「父さんが家に帰って来るのは、年に数週間だからね……って、来月だっけ。父さんが帰って来るのは?」


 俺は“しみじみ”した表情で兄に言っているが、途中から思い出すような表情で言う。


「そうだな。武蔵!」

「来月が……父さんが帰って来る月だ!!」

「けど、俺たちはもう、父さんが帰って来るのを、待ち遠しいとは思って無いがな…!」


 兄は苦笑しながら言う。

 小学生などの子どもの頃は、俺たち兄妹は父親を求めていたが、虹心も含めてこれだけ成長してしまうと、父親の存在なんて却って邪魔に成ってしまう!?


 兄の言葉通りなら、虹心は兄と同時に父親を求め、虹心は兄を攻略出来ないと判断して、俺へシフトしてきた。

 俺にも彼女が居れば(!?)、虹心の相手なんかしないが、俺は不幸の子なので虹心にすがり付くしか無かった!??

 兄は、困った微笑み表情に成って言い始める。


「話しはれたが……武蔵も虹心と仲良くするのは良いけど、程々にしとけよ!」

「……母さんも、気にしている感じだからさ!!」


「!!」


(母さんに加え兄も、俺と虹心の関係を不審に感じていたか!)

(年頃の兄妹が、兄妹で公園には遊びには行かないし、夏休み中ほぼ毎日兄妹で暮らしていれば、誰だって疑問に感じるよな…!)


「大丈夫だよ…。兄貴!」

「俺には、ちゃんと好きな人が居るから!!」


 俺は作り笑顔で兄に言う。


「……武蔵も虹心も、真面目な性格だから、仲が良いだけで終わると思うが……」


 兄は眉をひそめながら言う。

 兄も虹心から、かなり強めのモーションを貰っていたから、俺への注意喚起も兼ねているのだろう。


『ガチャ!』


 虹心がお風呂を済ませたらしく、リビングに戻ってきた。

 和やかな表情で一人喋りを始める。


「ふぅ~~、この時期のエアコンは良いわね~~」

「ちょっと……のぼせちゃった!///」

「エアコンの側に行こうっと~~♪」


 虹心の姿はパジャマ姿で有り、言い終えると、エアコンの吹き出し口の側に行って、冷風を直に浴びている。


(俺と虹心の関係を母さんや兄にバレても、問題は起きないだろうが、この関係を続かせるのも良くは無いかも知れない……)


 俺は心の中でそう感じる。

 第三者の目線から見れば、俺と虹心の関係は異常に成るのだろう……

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